研究課題/領域番号 |
21K12741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90130:医用システム関連
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研究機関 | 福井工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松井 栄樹 福井工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (90369976)
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研究分担者 |
高山 勝己 福井工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (70226934)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | がんPDTシステム / 修飾フタロシアニン / ラマン散乱測定 / 二量体フタロシアニン / 糖鎖―Pc複合体 / がんPDT / レーザー照射 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、がんの治療に適用可能な光線力学療法(PDT)の新システム、レーザーをトリガーとして発動する新規糖鎖脱離―細胞毒性連鎖システムを提案する。本システムは以下の特徴がありQOL向上に貢献する。 ①「糖鎖―Pc複合体」はWarburg効果により高選択的に腫瘍細胞に取り込まれる。 ②Pc二量体は長波長側に吸収帯があるために長波長レーザーが使用でき、より腫瘍組織深部まで光が届く。 ③「糖鎖―Pc複合体」はレーザー照射により糖鎖を脱着でき、活性な「二量体Pc」へのレーザー照射により高い光細胞毒性を発現する。 ④糖鎖の吸脱着により光感受性をコントロール出来るため、PDTの副作用である光過敏症を抑制できる。
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研究実績の概要 |
がんPDTシステムに適用可能な、架橋部位と相互作用部位から成る二量体Pcを合成しMALDI-MSの結果から生成を確認した。また生体内での相互作用による、がん細胞への色素集積化を目的とした修飾水溶性Pcを合成し、MALDI-MS、ESI-MSの結果から生成を確認した。合成した修飾水溶性Pcは、極性部分としてアミノ基、チオエーテル基、エステル基、ピリジル基をそれぞれ有する化合物であり、得られた修飾水溶性Pcはソーレ帯およびQ帯がUV-vis測定により観測され、Pc骨格の形成が確認された。また、体内での親和性の向上を目指し、骨格を変えたPcや低分子量の極性Pcについても合成し、同定を行った。得られたPcについて、弱酸性や弱塩基性の状態での水への溶解性を確認し、Pc骨格の分解が起こらないことを確認した。 さらに、「生体分子―Pc複合体」の形成を確認するため、ESI-MSによる複合体検出実験を行い、アミノ酸や糖、他の色素と相互作用した種の質量、理論マスパターンと一致したシグナルを確認、同定した。これらは本研究にて提案する連鎖PDTシステムの基盤となるものである。 また、レーザー照射による糖鎖脱着の確認を目的とした、レーザー照射―スペクトル検出システムを市販の分光装置を組み合わせて構築した。ダイオードレーザーに(532, 660 nm)の2種類を選択し、20X対物レンズ、レーザー光と散乱光を分離可能なフィルターをそれぞれ備えた散乱測定システムをSMA―ファイバーにより小型CCD検出器に接続して構築し、さらに画像を取り込めるカメラと検出器をミラーにて切り替え可能とし、PC上から測定、データ取り込みが出来るようになった。 今後、連鎖PDTシステムの基本機能の測定に活用し、研究データを蓄積する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始1年目は、計画はおおむね順調に進展している一方で、課題も出てきていた。 令和3年度の計画であった、(1) 二量体Pcの合成と糖鎖―Pc複合体の形成(実験)については、二量体Pcの合成と同定は予定通りできたが、収率と類縁体の合成が課題となった。これらは、合成ルート自体の問題でもあるので、引き続き違うルートでの合成と、同様の機能を発現する化合物の探索を続けていく。 (2) レーザー照射―スペクトル検出システムの構築(実験装置の製作、実験)については、上記の通り、目的とするシステムが構築できた。 研究開始2年目は、特にマウス癌細胞株への本PDTシステムの適用(生体試料実験)の可能性について研究を行うとともに、レーザー照射―スペクトル検出システムの改良を行った。具体的には、システム構築のための大腸菌および酵母へのPc毒性試験、ヒト癌細胞MCF-7の培養条件の確立を行った。 来年度以降は、得られた知見や化合物、検出システムを基盤として、ヒト癌細胞MCF-7のへの本PDTシステムの適用を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は3年目であり、まずは計画通り研究を進める。 令和5年度の(1)効果的な「Pc複合体」構造の探索と確定(実験)、(2)ヒト癌細胞株への本連鎖PDTシステムの適用(実用に向けた指針の提示)を、共同研究者の協力を得ながら推進していく。また同時に、同様の機能を発現する化合物の探索を継続して実施し、がんPDTシステムの基盤事項の確認、システムの構築を行う。
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