研究課題/領域番号 |
21K12771
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藪 謙一郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任研究員 (50626215)
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研究分担者 |
田中 敏明 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (40248670)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 音声 / 構音障害 / 聴覚フィードバック / 支援機器 / 発声 / 音声フィードバック |
研究開始時の研究の概要 |
声は、単に要求や意思を伝達するだけでなく、人間関係や社会参加を円滑にし個人の尊厳にも関わる重要な役割を担う。音量、抑揚、声のスペクトル、構音の精度や速度といった音声要素は、場に応じた個人の裁量で各器官が制御され多様に変化する。 本研究では、話者の音声を極力維持したまま、特定の音声要素のみを補完する要素技術を開発することで、音声を分析的に捉え、自己表現に必要な音声要素を明らかにしていく。具体的には、代表者らが取り組んできた発声機能・構音機能・音声フィードバック機能の三つの支援デバイスの知見を基礎に、医療・音声・工学の各視点から、話者に残された音声を活かして表現機能を引き出す手法を探る。
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研究実績の概要 |
本研究では、発声、構音、音声フィードバックのそれぞれの音声機能要素について、代表者らが開発してきた、電気式人工喉頭、音声変換システム、話速変換システムの技術を基礎として、個々の音声要素を制御可能とする要素デバイスを開発し、独立に制御される音声要素について臨床・実験データの収集を行い、自己表現機能にどのように影響するかを調べる。初年度の2021年度には、各種の音声支援機器、アプリ開発を行い、2022年度には、おもに音声フィードバック機能について開発アプリを用いて臨床的データを収集し言語聴覚士のご協力を頂き改良点等を抽出した。 2023年度は、引き続き音声フィードバックに関するアプリの臨床データの収集を行い、中等度の構音障害の患者での音声分析から数例の知見を得ることができた。また、臨床で分かった問題点について、具体的な改善案を検討した。 構音機能の補完システムについては、先行する研究で開発・改良を進めた話者自身に残存する発声をそのまま用いるウェアラブルな構音補完システムを用いて、構音器官の動きと手指操作の動きの速度の違いの観点から、補完システムへの手指操作による入力速度を補うアルゴリズムを提案・実装し、構音の制御に関する知見を得た。 発声機能を支援する電気式人工喉頭については、上記の構音補完システムにおける原音生成の知見や、発声の原理の観点から、より自然な発声音の生成や周波数制御の方法等について検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに生じた、COVID-19の流行による行動制限や研究体制の制限による遅れが続いている。構音・発声障害の患者の協力が得づらい状況になっており、遅れが重なっている。システムの開発についても、機器や部品の入手困難などが重なり、開発に遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
遅れが生じているが、当初の方針の通り各種のシステムの改良と、調査を順次に進めていく予定である。 (a)発声機能について、開発済みの電気式人工喉頭のシステムを利用して、声帯音に近い波形を振動子へ与え、波形特性の各要素の役割を検討する。可能であれば、呼気センサによる制御機能を加えた実験装置を試作し、呼気と抑揚の関係性を調べ、話者による抑揚表現の向上を目指す。 (b)構音機能について、これまでに開発してきた第1ホルマントと第2ホルマント(F1-F2)に対応する盤面上でゆびを操作しその位置と動きにより音を無段階的に変化させる音声生成器改良について、「構音機能」のみに障害があり「発声(原音生成)機能」は正常な場合を想定し、(b1)音声を制御するための音声入出力システムや操作デバイスに改良を加え発話と同期した操作の追従性をさらに改善する。また、 (b2)声の周波数スペクトル成分をさらに分類して不明瞭の原因成分のみを補完(例えば、F1のみF2のみなど)できるような音声要素の補完方法を探る。 (c)音声フィードバック機能について、アプリの改良を行いつつ、引き続き構音障害が生じている患者にアプリを使用した事例を収集し、音声の話者へフィードバック効果を検証しつつ、最適なフィードバック方法を検討する。また、同様の手法を日常の支援方法として利用可能かどうかも検証していく。 上記の基礎データ収集と技術開発のプロセスを繰り返して行い、医療関係者・患者団体などからの意見を頂きながら、音声要素の制御機能の向上を図り、それらの役割を臨床的な観点から整理し、初心者でも扱いやすい実用機としての支援器・アプリの設計・開発を行い臨床的な実用化を目指す。
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