研究課題/領域番号 |
21K12774
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分90150:医療福祉工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
中川 一人 日本大学, 生産工学部, 講師 (90523986)
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研究分担者 |
伊藤 玲子 日本大学, 医学部, 兼任講師 (10599351)
権 寧博 日本大学, 医学部, 教授 (80339316)
肥田 不二夫 日本大学, 芸術学部, 研究員 (90256909)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | pMDI / 吸入治療 / COPD / 自動噴霧 / 加圧式定量噴霧式吸入器 / マウスピース / 気管支喘息 / 吸入療法 / 慢性閉塞性肺疾患 / 微差圧センサ |
研究開始時の研究の概要 |
加圧式定量噴霧式吸入器(pMDI)を用いた吸入治療は患者の吸入手技に依存するため治療効果がばらつくとされる。本研究では制作したセンサデバイスを用いてし吸入状況をモニタリングし、患者へのフィードバックを行う。これにより患者自身に適切な吸入状況を把握させるとともに、吸入療法の指導に対する利用も検討する。また、吸入状況のデータを用いた自動噴霧デバイスを作製し、実用性について検討する。
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研究実績の概要 |
吸入治療の効果を高めることを目的とし、気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の吸入療法に利用されるpMDIに取り付けが可能なセンサーデバイスおよびこれを応用した自動噴霧システムの開発を進めた。社会実装を目的として開発したデバイスおよびマウスピースに対する長期使用(1か月)による効果について調査した結果、多くの被験者で使用の初期は噴霧後に吸入の乱れが認められ、被験者自身が吸入の停止を意識して噴射後に吸入速度が速くなる傾向が見られた。本デバイスでは被験者に対して吸入速度のみフィードバックしているため、被験者は噴霧タイミングを予期することが難しく意図しないタイミングの噴射では吸入が乱れたと考える。また、実験後の聞き取りでは噴霧が予期できないため吸入時に緊張するなどの意見が見られた。これを改善する方法として、噴霧タイミングを視覚的に伝えるなどシステムを付加することが有効である。しかしながら、1カ月後には吸入の乱れは小となりデバイスに対する慣れが見られた。一部の被験者では1カ月間の使用でも吸入時の乱れが認められた。この被験者の特徴として吸入量が少なく、1回の吸入で噴霧した薬剤をすべて吸入することができないため、口腔内に薬剤が残るとの意見があった。このような被験者に対しては、長期間のトレーニングや自動噴霧デバイスの使用のみでは改善が難しく、噴霧した薬剤を一定時間停滞させるチャンバを有した吸入デバイスを利用することが有効である。以上のことから自動噴霧デバイスは長期利用の際に適切な吸入の実現に大きく寄与することが明らかとなったが、被験者へのフィードバックの方法など引き続き検討する必要がある。また、デバイスのみでは対応が困難な被験者が確認され、本デバイスのユーザと想定している吸入量が少ない被験者であったことことから、デバイスに対してチャンバなどの併用も検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度に行った被験者数は18名、試験期間は最長で2カ月間であるため、自動噴霧デバイスの長期的利用による評価については十分な結果を得られた。また、噴霧タイミングの細分化などシステムの見直しを行い、より被験者に適した条件での噴霧が可能となった。この中で、長期的利用によりデバイスの対する慣れが生じること、ユーザへ負担が軽減されることが明らかとなったことから、社会実装の向けての知見を得ることができた。また、簡単ではあるが、噴霧タイミングをスマートフォンに表示するシステムを導入したことで、より被験者へのフィードバックを容易にし、負担軽減につなげることができた。 しかしながら、本来であれば患者に対する実装試験を行う予定であったが新型コロナウイルスの影響でpMDIを使用している患者接触や被験者としての協力を得ることが難しかった。被験者の年齢は若年から高齢者まで幅広い年齢層であったが、患者ではなく薬剤も練習薬を用いた。また、健常者であるため被験者の呼吸状況は比較的安定していたことから、デバイスの操作性評価にとどまり、実際の医療効果について実験を行うことができなかった。また、本来は社会実装モデルを製作し試験を行う予定であったが、患者からのフィードバックを得ることができなかったため、患者への実装試験後に製作することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルに若干の鎮静化が見られるため、可能な範囲ではあるが医学部を中心として患者特に高齢者を被験者とした実験を進める。これに伴い、医療機器製造業登録企業による製作を進めるとともに、材料の選定ならびに形状のブラッシュアップを行い、最終的なデバイスを作製・実用試験を行う。また、デバイスのみでの利用が困難な患者に対しては吸入用チャンバとの併用についても検討を進めるとともに介護者の利用についても検討する。 これらのデバイスおよびマウスピースを利用した際に機器への付着ならびに吸入速度の低下により薬剤の吸入量の損失が考えられる。薬剤の吸入状況に関しては口腔内への不快感など現状では被験者からの聞き取りで評価しているため、客観的な評価方法として呼吸シミュレーターBRS100iおよびAPSスペクトロメーター3321を使用し、吸入状況を再現するとともに吸入される薬剤量並びに薬剤粒径の分布について調査し、機材への薬剤付着および口腔内への付着量について明らかにするとともに、薬剤の損失軽減の方法について検討する。また、吸入薬剤の粒径については患部に到達可能な粒径と経路で付着し副作用の要因となる粒径が混在する。このことから、本件研究で提案するマウスピースならびに吸入用チャンバにおいて適切な粒径の薬剤のみを吸入する方法についても検討を進める。
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