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責任概念の再考:京都学派の時間論から

研究課題

研究課題/領域番号 21K12823
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分01010:哲学および倫理学関連
研究機関名古屋工業大学

研究代表者

犬塚 悠  名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80803626)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワード責任 / 京都学派 / 和辻哲郎 / 西田幾多郎 / 三木清 / 技術 / 自然 / AI / 時間 / 尊厳 / 環境
研究開始時の研究の概要

本研究は、責任概念とその適用範囲を西田幾多郎ら京都学派の時間論から再考するものである。今日国内外の哲学において、行為主体を人間と環境との複合体において捉える立場が注目されている。芸術家は最終的な作品を事前に知らないと西田が指摘するように、環境とのかかわりにおける行為の結果を事後的に振り返る我々は、将来に向けどれだけの責任を担うことが可能なのか。
この問いを主課題とする本研究は、次のサブプロジェクトからなる。
1.無と超時間性:「今ここにないもの」を考える能力は誰のものか。
2.創造と事後性:創造行為において「私」はいつ現れるのか。
3.倫理と個・社会の時間:責任はいつ誰が判断し、何を求めるものなのか。

研究実績の概要

本研究は責任概念とその適用範囲を再考することを目的とし、京都学派の哲学、特に時間論をその手がかりとするものである。2023年度は、2件の口頭発表を行い、1件の書評と1件の研究ノートを発表した。
口頭発表の内1件は、日本哲学の国際学会におけるものである。三木清の哲学において責任概念がいかに捉えられているのかを、その生涯著作の検討を通して明らかにした。三木は、個人は自身を生み出した創造的な社会に対して責任を負い、社会の要請に応える義務があるとする。本発表では更に、予見能力を重視する三木の責任論について、ジョン・フォージの「前向きの責任」と比較しながらその技術倫理的意義を論じ、また三木が人間の根底にあるとする創造的自然も踏まえ、その環境倫理学的意義を論じた。
もう1件の口頭発表は、技術哲学の国際学会におけるものである。前年度にヘルスケアAI開発における設計者の責任を扱った共著論文を発表したが、本口頭発表では更にその倫理的基盤として、普遍的な基準ではなく個人のニーズへの応答を主題としたケア倫理の観点を新たに取り入れた。先の論文と同様、これは責任概念とその適用範囲の再考を目的とする本研究にとって、その現代的意義を検討するための試みとして位置付けられる。
書評は、「個」の定義の問い直しをテーマとした倫理学書籍についてのものである。「和辻倫理学を超えて、群衆の一人でありながら個と成ることの倫理的意義を問う」当該書籍を通して、和辻哲郎や西田幾多郎らが問題とした個の問題が現代においても十分な意義を持ち、更なる展開が求められることが確認された。
また、前年度の東洋的自然観をめぐる研究会における口頭発表に基づいた研究ノートが、同テーマの展覧会のカタログに掲載された。和辻における人間・自然理解を分析し、特に『桂離宮』で和辻が論じた作者の没後も続く芸術的形成力と、和辻の風土論との間の連続性を明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

計画の変更はあったが、当初からの本研究の対象である京都学派における責任論の調査は進んでおり、本研究の現代的意義を示す対象として位置付けられるヘルスケアAIをめぐる研究成果も出たため。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策は次のとおりである。
1.1.西田幾多郎・三木清の責任論:前年度までの調査によって明らかとなった西田幾多郎・三木清の責任論について、論文を執筆する。1.2.京都学派の責任論:和辻哲郎や他の京都学派の哲学者における責任論についても、西田・三木と比較しながら文献調査を進める。
2.1.京都学派の芸術・創造論における事後性:芸術家は単に完成図を物に反映するのではなく、試行錯誤を通して作品さらに芸術家自身が形成されると指摘する西田の議論を中心として、「自覚」の事後性を明らかにする。2.2.京都学派教育学の芸術・創造論における事後性:西田哲学の影響を受けた木村素衛の教育論を手がかりに、創造行為の後に自分が何者かを知る人間の「自己形成」の事後性を考察する。
3.1.ヘルスケアAIなど、具体的事例をめぐる責任論:現代の技術論・責任論を参照しつつ、上記の研究から得られる知見の応用可能性を探る。
1.1と1.2は2024年度中に、2.1と2.2は2025年度に行う。これらと並行して、3.1の具体的事例の研究を行う。一研究課題に時間を要した場合は、適宜計画を見直しながら研究を進める。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023 2022 2021

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 船木亨『いかにして個となるべきか?――群衆・身体・倫理』書評 「はぐれ者」の辛さの肯定から始める倫理学――群れと個のダイナミズムを描く2024

    • 著者名/発表者名
      犬塚悠
    • 雑誌名

      図書新聞

      巻: 3621 ページ: 8-8

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ヘルスケアAI開発における設計者の責任2022

    • 著者名/発表者名
      犬塚 悠, 松井 佑介
    • 雑誌名

      技術倫理研究

      巻: 19 ページ: 1-22

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] 木村純二,吉田真樹編『和辻哲郎の人文学』書評 危機の時代における人文学の姿の探求ーー近代日本の知の巨人から学ぶ2021

    • 著者名/発表者名
      犬塚悠
    • 雑誌名

      図書新聞

      巻: 3513 ページ: 5-5

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [学会発表] A Democratic Design of Healthcare AI: Dialogical Co-evolutionary Model and its Ethical Basis2023

    • 著者名/発表者名
      Inutsuka Yu, Matsui Yusuke
    • 学会等名
      The 23rd Biennial Conference of the Society for Philosophy and Technology
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Creation and Responsibility in Miki Kiyoshi’s Philosophy2023

    • 著者名/発表者名
      Inutsuka Yu
    • 学会等名
      7th Annual Conference of the European Network of Japanese Philosophy
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 間柄と環境――和辻哲郎の『風土』『倫理学』『桂離宮』から2022

    • 著者名/発表者名
      犬塚 悠
    • 学会等名
      山水レクチャー第4回
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 西田幾多郎における自己の事後性と責任2022

    • 著者名/発表者名
      犬塚 悠
    • 学会等名
      京都学派およびポスト京都学派における科学哲学および技術哲学研究会 2022-9
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] コメントーー世界哲学における「尊厳」概念2021

    • 著者名/発表者名
      犬塚悠
    • 学会等名
      東京大学東アジア藝文書院(EAA)連続シンポジウム「世界哲学・世界哲学史を再考する」第5回「世界哲学における「尊厳」概念」
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Nature and Technology: Comparing Watsuji, Nishida, and Miki (Panel: The Human Environment between Nature and Technique: A Promenade in Twentieth Century Japanese Philosophy)2021

    • 著者名/発表者名
      Inutsuka Yu
    • 学会等名
      16th International Conference of the European Association for Japanese Studies
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [図書] アーバン山水2023

    • 著者名/発表者名
      近藤亮介
    • 総ページ数
      28
    • 出版者
      山水東京
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 工科系学生のための〈リベラルアーツ〉2023

    • 著者名/発表者名
      藤本温, 上原直人
    • 総ページ数
      220
    • 出版者
      知泉書館
    • ISBN
      486285379X
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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