研究課題/領域番号 |
21K12825
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
戸谷 洋志 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (80807321)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ハンス・ヨナス / マルティン・ハイデガー / 未来倫理 / 歴史思想 / ナチス / 責任 / 想像力 / グノーシス主義 / 解釈学 / 良心 / 世代間倫理 |
研究開始時の研究の概要 |
世代間倫理の先駆者として知られるヨナスは、『責任という原理』において、楽観的な進歩史観を批判する形で未来への責任を基礎づける。しかし歴史概念そのものが主題的に論じられるわけではなく、また先行研究においてもヨナスの歴史概念に対する統合的な解釈はなされていない。しかしヨナスの倫理学にとって、歴史をどのように理解するか、という問題が極めて重大である。なぜなら、現在と未来の間には歴史があり、そうである以上未来世代への責任は、未来への歴史をどう形作るべきかという問いと不可分だからだ。こうした観点から本研究は、未来への責任にとって歴史が何を意味するのか、という「問い」をその核心に位置づけ、研究開発を行う。
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研究実績の概要 |
今年度は、ヨナスの歴史思想に対するマルティン・ハイデガーからの影響を中心的に検討した。ヨナスは第二次世界大戦以降、ハイデガーのナチスへの加担をその主著である『存在と時間』に胚胎された傾向の現れとして解釈し、『生命の哲学』では特にそれが古代グノーシス主義の再来として論じられた。一方で、1988年に公刊されたAntwortでは、そうした傾向が『存在と時間』の決意性の概念との連関のなかで論じられ、ここからハイデガーがナチスの出現を本来的な歴史的運動として解釈した理由が説明される。こうしたヨナスによるハイデガーの解釈は、人間の責任能力の基礎としての自由を、新たな人間像を構想しうる想像力のうちに見出し、かつそうした人間像の刷新が歴史を形成すると考えたヨナス自身の歴史思想と、鋭いコントラストを示している。ここから本研究では、『責任という原理』でヨナスによって展開される未来倫理的な歴史思想を、ハイデガーの哲学の批判的克服に企図として解釈した。これらの成果を、戸谷洋志『ハイデガー『存在と時間』』(NHK出版、2022年)として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究は、当初の予定とは異なる順序ではあるが、ヨナスの歴史思想の全体像の解明に向けて、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、『グノーシスと古代末期の精神』におけるハイデガーからの影響を明らかにし、そこでヨナスがハイデガーの歴史思想からどのような影響を受けているのか、またハイデガーとは異なる出自をもつヨナスの歴史思想はいったいどの点にあるのかを検討する。それによって、ヨナスの歴史思想に対するハイデガーからの影響の全体像を明らかにする。また、『哲学的探究と形而上学的推測』において論じられるヨナスの歴史思想について、その草稿に対するハンナ・アーレントからの書簡を参照し、後期のヨナスが立脚していた歴史思想の全体像と形成過程を明らかにしていく。
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