研究課題/領域番号 |
21K12826
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
池松 辰男 島根大学, 学術研究院教育学系, 講師 (10804411)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 良心 / 決疑論 / 解釈学 / 応用倫理学 / カント / ヘーゲル / トマス / 言語 / 幸福 / ドイツ観念論 / 承認 / 自然法 / 哲学原論・各論 / 倫理学原論・各論 / 西洋哲学 / 西洋倫理学 / 西洋思想史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではまず、ヘーゲルやヘーゲル周辺の思想における「良心」概念の位置づけや影響関係を辿るところから出発する。そのうえで、彼らの背景にある中世から近代に至るまでの「良心」概念の系譜を調べ、それらを最終的に再びヘーゲルとの関係から整理することで、近代における「良心」概念の一つの全体像を描き出す。そしてその知見をもとに、ヘーゲル哲学研究や現代倫理学における「良心」概念の持つ意義の再評価につなげることをも目指していく。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究は、主にヘーゲルの「良心」概念を基軸とする思想史的背景の総括、ヘーゲルの「良心」論と他の思想との接続、および先行研究の整理にあてられた。その成果は主に研究構想発表「ヘーゲル「良心」論の意義とその思想史的背景」(日本ヘーゲル学会第4回フロンティア研究部会・2024年3月)のかたちでまとめられた。また、論文「ヘーゲルにおける主体と言語 : ラカン・デリダとの接点をめぐって」(『ヘーゲル哲学研究』29号)においては、昨年度の同名のシンポジウム提題をもとに、その後の討論等を受けてヘーゲル良心論解釈の部分を改稿し、現代思想におけるヘーゲル良心論の意義をあらためて提示することを試みた。 すでに2022年度以前の研究で明らかにしたように、ヘーゲルの「良心」概念にはロマン主義以外にも複数の背景が関連しているが、2023年度はそのうち特に中世・近世決疑論からカント倫理学に至るまでの思想史的背景の総括と、それに基づくヘーゲルの「良心」論と他の思想との接続の探究に重点が置かれた。特に、良心のみならず事例、適用、決疑論等の概念の取り扱いをめぐって、カント倫理学からガダマーの解釈学、現代倫理学(応用倫理学)に至るまでの諸問題・諸論争をヘーゲルに関連付けて理解できたことは、ヘーゲルの「良心」論はもとよりヘーゲルの倫理思想一般の現代的再生という点で、意義深い成果であった。また、これに関連付けるかたちで、決疑論の歴史およびヘーゲルの「良心」論を巡る先行研究についても整理した。これらにより、ヘーゲルを基軸に近代における「良心」概念一般の思想史的背景を総括するという全体の研究課題についても、結論の見通しが出てきた。ただし、ルソーやフィヒテら、近世の他の哲学者の「良心」論との比較・影響関係整理については、なお課題が残された。これについては引き続き2024年度中に取り組みたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は2023年度中にヘーゲルの「良心」論を巡る研究成果をいったん総括して、学会誌論文を投稿、2023年度中に公表予定であったが、他の思想との接続と先行研究の整理の2点に当初の想定以上の時間を要し、2023年度中の投稿を見合わせた。ただしその結果、両点については当初の想定以上の多くの知見を得ることができた。ヘーゲルの良心論がヘーゲルの倫理思想の核心であること、またそれを現代的に再生することでカントおよび現代の倫理学の諸問題・諸論争に対しても十分な意義を示しうることを確認することができた。 また、これと併行して、ルソーやフィヒテら、近代の他の「良心」論との比較・影響関係についても、より丁寧な検証を要する点が多々見つかり、これらを整理・総合する必要性があることから、当初の想定より多くの時間を割くことが妥当と判断した。特に、フィヒテの良心論は、カントからヘーゲルの間を繋ぐものとして、別に論文または発表のかたちでまとめる選択肢もありうると判断した。 これらにより、研究の進捗は当初の想定よりやや遅れている。とはいえ、これらの課題は2024年度中におおむね解決の目処がついており、2024年度中に研究成果全体をまとめるという方向性に変更はない。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、まずヘーゲルの「良心」論を総括するとともに、その中で「良心」をめぐる主要な思想史的背景とその意義をまとめる。ここには、ヘーゲルの良心論の基本的な内容のほか、その思想史的背景(特に決疑論)、カント倫理学・現代倫理学との関連が主に盛り込まれる。それらを通じ、ヘーゲルの良心論を基軸とするヘーゲルの倫理思想の現代的再生を図るとともに、従来、キリスト教的/カント的な「良心法廷」やロマン主義的な「良心の声」の観点のみがクローズアップされがちであった国内の「良心」思想史的研究に対して、その課題を指摘するとともに、現代倫理学における良心の新たな(しかしヘーゲルや決疑論に潜在していた)意義を喚起することをも図る。これらの研究成果は、学術誌論文のかたちで2024年度中に提示予定である。 また、それと併行して、ルソーやフィヒテら近代の哲学者らにおける「良心」論については、分量の観点から上記に総合することは困難と考えられ、別途まとめて論文または発表のかたちで提示する。なお、全体を総括するものについては、出版も視野に検討する。
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