研究課題/領域番号 |
21K12828
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
太田 裕信 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20788509)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 西田幾多郎 / ハイデガー / ポイエーシス(ポイエシス、制作) / 技術 / 芸術 / 行為 / 鈴木大拙 / 柳宗悦 / ポイエーシス / 善の研究 / ドストエフスキー / 上田閑照 / ポイエシス(ポイエーシス) |
研究開始時の研究の概要 |
1930年代以降、西田幾多郎は「ポイエシス」を基礎概念とする哲学を形成した。「ポイエシス」とはギリシャ語で芸術と技術を含む「制作」を意味する。本研究は西田のポイエシス論の現代的意義の究明を目的とする。そのために著名な現代技術論と芸術論を含むハイデガーのポイエシス論との比較研究を企図する。またその比較研究の前段階として、西田とハイデガーを思索の糧とした上田閑照の「二重世界内存在」の哲学、西田のポイエシス論の芸術論的展開として見なしうる柳宗悦の「民藝」の思想に関する研究も行う。以上の考察は、制作(技術、芸術)、その連関における宗教や倫理という普遍的かつ現代的な諸問題を考えることに波及的に貢献する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、本研究課題の中心である西田幾多郎とハイデガーの「制作(ポイエーシス)」論を比較した研究発表を、ハイデガーの学会組織ハイデガー・フォーラムの大会で行った。その発表での質疑を踏まえて、その学会誌に論文を投稿済みである(電子ジャーナル。公開は9月ごろ) 後年、西田は「ポイエシス(制作)」を根本概念としたが、その哲学は明確に整理されておらず、具体的な現象学的叙述が疎かになっている。その哲学はハイデガーの技術論・芸術論と近しい。そこで本発表では、西田とハイデガーの制作論を比較し、西田の制作論の意義や問題点を突き込んで考えてみた。 両者の哲学は、人間的な目的観念だけでなく物(質料)の固有な輝きを重視し、自然と人間の調和した制作を志向するものであるとともに、資本主義と一体となった科学技術に批判的な視点を投げかける点で共通している。ただし西田のそれは、ハイデガーと比べて、近代科学への批判的な視点が少なく、「宗教」をより積極的に位置付けている。またハイデガーのそれは、西田が「作る」ということを重視したのに対して、物を「労る」という態度が前面に出ている。しかし、そのような差異はありながらも、総じて、西田の制作論は、東洋的な「自然」の思想の系譜と関連しつつ、「物」や「自然」との「応答」や「表現」を重んじた制作を論じた点において独自の意義をもっており、それはハイデガーと通じ合うという趣旨であった。本研究は、日本哲学側から哲学的技術論に貢献することになったと期待される。 また、2023年8月には、「ポイエーシスとピュシス――後期西田哲学の現代的解釈の一試論」という発表も某研究会で行った。こちらはより西田の「東洋」思想の背景に目を向け、近いうちに論文とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、大きく①上田閑照の「二重世界内存在」の哲学を西田とハイデガーのポイエシス論との関わりから考察する研究、②柳宗悦(および鈴木大拙)の思想交流から見る西田のポイエシス論の研究、③西田とハイデガーのポイエシス(制作:技術・芸術)論の比較研究を、行う予定であった。 ①に関しては、2022年に出版された共著(Tetsugaku Companion to Ueda Shizuteru - Thoughts about Experience, Language, and Zen edited by Raquel Bouso, Ralf Mueller, and Adam Loughnane, Springer, 2022.)所収の論文“Two-fold Being-in-the World in Ueda’s Philosophy: On His Interpretation of Heidegger and Nishida,” に結実した。②については、2022年に出版された共著(廖欽彬・伊東貴之・河合一樹・山村奨・編著『東アジアにおける哲学の生成と発展――間文化の視点から』法政大学出版局、2022年2月)に、「西田幾多郎と柳宗悦――ポイエーシスの哲学と民藝の思想」という論文に結実した。この論文は修正・加筆の上に、2023年に出版した単著『西田幾多郎の行為の哲学』に所収した。③については、上記のように、2023年度に口頭発表を行い、本年度、論文として公にされる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定では本研究課題は2021年(令和3年)度から2023年(令和5年)度までの研究であり、3年目の2023年度に海外での口頭発表を行うつもりであった。しかし、研究代表者の多忙により、2023年度には海外での口頭発表は実現できなかった。そのため、研究期間を1年間延長し、2024年8月に、本研究課題の総括となる思考を国際学会で発表し、研究代表者の研究の進展を促進し、ひいては日本哲学からの世界哲学への貢献に向けて努力したい。
また、可能であれば、西田・鈴木大拙・柳宗悦の3者の思想連関に関する論文も発表したい。
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