研究課題/領域番号 |
21K12832
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
三浦 太一 中部大学, 人文学部, 講師 (60847531)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 古代ギリシア哲学 / プラトン / 狂気 / ギリシア哲学 |
研究開始時の研究の概要 |
西洋思想全体に根本的影響を与えたプラトンの著作の中では、狂気が人間精神において重要な働きを為していることが見て取れる。いくつかの著作では、狂気は、魂の知的働きの喪失状態として、危険視される。他方で、知的探究に従事する哲学者も狂気にあずかることから、その積極的評価を見ることもできる。プラトン著作における狂気概念を分析し、その複雑な内実を解明することが、本研究の目標である。古代ギリシアのみならず現代でも、狂気は、共同体が恐怖に陥った時にその影響力が著しく高まる。我々は今、疫病という地球規模の危機に対する恐怖と共に生きている。危機に伴う狂気を理解し、それに対抗するため、プラトンの狂気分析を学ぶ。
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研究実績の概要 |
プラトン哲学における狂気の意義の解明のため、2023年度は、『パイドン』篇における人間における健康と病の考察に注力した。特に同作品の中の「親近性の議論」と呼ばれる箇所において、狂気という概念を理解するための背景知識となる、魂の健康と病という対概念について知見を得ることを試みた。この研究成果は、西洋古典研究会第八十四回大会において、「プラトン『パイドン』における魂の健康と病――「親近性の議論」の分析から」という題目で口頭発表された。 通常、身体的感覚機能の使用そのものや、身体的欲望を有すること自体は、直接的には病であるとはみなされない。しかし、「親近性の議論」は、魂の神的存在への類似性を示すと同時に、神的存在と共にあることを促進する知的活動への集中を魂の本来の状態であると規定する。他方で、それを妨害する身体との関わりを、哲学者にとって避けるべき有害なものとしている。これらの規定により、作品特有の健康/病についての理解が得られた。すなわち身体自体が人間にとって病の契機となり、知的活動への集中が魂の本来のありかた、健康を与えることになる。 上記の研究と並行して、米国の出版社から出版予定である、『パイドン』篇における自己探求というテーマについて論じた書籍の、第一章から第四章の草稿を準備した。この書籍においては、哲学者が自己自身の知的欲求について把握することが『パイドン』の主題として重要であることを主張している。著しく巨大になった欲望は古代ギリシアにおいて狂気の原因とみなされることがある。また、プラトン著作においては、欲望のあり方が人間本来の、あるいは、逸脱した状態を示している。そのため、欲望への考察が狂気理解についてさらなる知見をもたらすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年度から、研究代表者自身と、幼児を含む家族の体調不良が継続しており、計画通りに研究を遂行することに困難が生じた。そのため今年度は、研究対象を『パイドン』に絞り、口頭発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に作成した『パイドン』における魂の健康と病についての研究成果を、学術雑誌に発表することを目指す。同時に、おなじく『パイドン』における欲望と自己探求を考察した書籍の執筆を進め、この書籍内部でも、狂気についての研究成果を提示することを試みる。 また、プラトン他対話篇の分析を、上記の『パイドン』研究において、対比対象として提示することを計画している。特に『国家』におけるエロース(恋)の狂気についての考察がこの対比において重要だと考えている。
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