研究課題/領域番号 |
21K12857
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
森 元斎 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (40846052)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | アナキズム / 人類学 / デヴィッド・グレーバー / J・C・スコット / 思想史 / 哲学 / 具体性 / 相互扶助 / 基盤的コミュニズム / 負債 / パースペクティブ |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの研究では、哲学・思想史と人類学とで、同様のテーマが検討されながらも、それらが必ずしも重なることなく、並行したまま研究が行われてきた現状に対して、申請者の研究は、これらを共に扱うと同時に、哲学・思想史の枠組みで、人類学の研究を普遍化していくことに学術的な独自性と創造性が認められる。とりわけ「相互扶助」と「具体性」という概念を基軸に据えて研究していくことによって、人類学でも扱われる個々の事例も踏まえながら、テキストや思想家ごとにどのように論じられているのかを厳密な読解を通じて行ない、アナキズム思想の展開という観点からも世界でも類例をみない独自性と創造性を有することが明確である。
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研究実績の概要 |
申請者はこれまで、哲学の枠組みで「具体性」と「相互扶助」概念を中心に研究を行なってきた。哲学や思想史では概念の内実やその概念の変遷を中心に検討することで、その概念がもつ射程の広がりを普遍的に議論ができるよう提示するのであるが、その一方で、実際のフィールドワークの事例を基に、アナキズム的な要素を、具体的な事例において見出す観点が不足していたことは否めない。 そこで申請者は、アナキズム思想をフィールド・ワークに裏打ちされた人類学の観点から探究してきた研究者の記述をも射程とし、そこからいかにアナキズム思想が抽出されるのか、あるいはそこにアナキズム思想が見出すことができるのかを検討課題とし、アナキズム思想における思想と人類学の交差関係について明らかにする。哲学・思想の側面としては、ブライアン・マッスミといった思想家の著作を検討する一方で、人類学の側面としては、デヴィット・グレーバーやアンドレイ・グルバチッチの著作における哲学・思想史の受容関係を明らかにし、両者の共通項を「具体性」や「相互扶助」の観点から共約可能なものとして接続し、理論だけでなく、実践面においても両者をつなぐことができる、新たなアナキズム思想の確立を目的とする。 そこで今年度はグレーバーとウェングロウの『万物の黎明』の読解や、ロジャヴァ革命の研究から人類学と哲学・思想の交差を研究した。前者においては、近藤和敬・森元斎・酒井隆史「討議『万物の黎明』から新しい哲学がはじまる」『『万物の黎明』を読む』河出書房新社などを発表した。また後者においては、ドイツ・ハンブルクでの研究会発表Motonao Mori「Der Mensch der Moderne und die Rojava-Alternative」や、森元斎「土と音楽」『情況』情況出版や森元斎『死なないための暴力論』集英社インターナショナルなどを発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は人類学と哲学・思想の交差としてグレーバーをはじめとした論文や書籍を読解し、諸外国においても研究会や学会発表を行うことができ、また論文や共編著、単著単行本などを刊行できたため、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新たな論点として、哲学・思想史と人類学の交差のみならず、グレーバーとウェングロウが提示してきたように、考古学との交差も検討していきたい。また引き続き哲学・思想史と人類学との交差として検討すべき論点として、人類学者とのダイレクトな対話を通じて、アナキズムの議論を検討していきたい。
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