研究課題/領域番号 |
21K12862
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01040:思想史関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
石原 悠子 立命館大学, グローバル教養学部, 准教授 (40846995)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ガダマー / 上田閑照 / 遊戯 / 賓主互換 / 没入 / 自己否定 / 遊びの哲学 / 世界遊戯 / 自己と世界 / 行為的直観 / 弁証法 / 媒体性 / 遊び / 哲学 / 京都学派 / 現象学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究ではニーチェや後期ハイデガー、ガダマー、またフィンクらが展開した西洋近現代における遊びの哲学との比較研究を通して、京都学派における「遊びの哲学」の内実を明確化することを目的とする。具体的には、西田幾多郎・西谷啓治・上田閑照における「遊び」に関する論述を、「自己」「他者」「世界」という三つの問題圏において検討する。このことを通して京都学派の哲学が遊びの哲学に寄与しうる可能性について問う。
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研究実績の概要 |
2024年1月にここ数年間の研究成果である書物(Intercultural Phenomenology: Playing with Reality)が出版された。そこでは現象学の鍵概念である「エポケー」(判断停止)概念を援用し、エポケーを通して「実在と遊ぶ」ことを提案した。本年度ではこのエポケー概念に見られるような自己否定的な側面と遊びの関係についてガダマーと上田閑照の「遊戯」概念の比較研究を通して検討した。ガダマーは『真理と方法』において遊戯を「行ったり戻ったりする運動」と定義し、そのような遊戯概念に基づいて他者理解を考えていく。他者を理解するということは、私が相手を理解しようとし、相手が私を理解しようとするその間に繰り広げられる行ったり戻ったりする遊戯的な運動である。このような他者理解においてとりわけ強調されているのは自分自身とは他なるものへの積極的な参与である。だが、遊びに参与し没入するためにはすでに没頭していた事柄(日常の出来事や仕事など)から一時的に距離をとる必要があるように、他者理解に没入するためには自己理解から離れる必要がある。ガダマーは遊びの積極的な側面を強調するあまりこのような「消極的」な側面についてはあまり語っていない。まさにこの点を強調したのが上田閑照の他者理解である。上田は禅仏教における「賓主互換」、すなわち主と賓が相互に入れ替わる運動にこそ真の対話おより他者理解があるとし、それを「人と人とのSpielen」と呼ぶ。そこではガダマー同様、遊びの動的な性格が見られているが、ガダマーが遊びの没入的な側面に注目したのに対し、上田はそのために必要な「自己否定」の側面に注目する。遊び研究一般においてはガダマーが強調したような没入的側面が注目されがちだが、上田の他者理解を通して遊びの「消極的」な自己否定的側面が遊びのもう一つの大事な局面として浮かびあがってくる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は育休あけの年度であったため研究のペースを取り戻すにやや時間がかかったが、途中からは軌道にのることができた。学会発表については子供が小さいために国内外の学会で発表する機会は当初の計画より少なかった。とはいえ他分野の人と交流する機会が増えたことから哲学的な観点からだけではなく、例えば認知科学や人工知能の観点から遊びをどう捉えるのかということを考える機会ができ、それによって遊びをより包括的な観点から考えられるようになってきている。ただし本年度の研究成果についてはまだ論文として発表できていない。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を論文のかたちにまとめることが第一の課題である。その後は後期ハイデガーおよびニーチェの遊戯概念を検討し、当初計画していた「自己」「他者」「世界」という三つの問題圏のうち、「世界」の局面について研究をすすめていく。
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