研究課題/領域番号 |
21K12865
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金 志善 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員 (30720627)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 日韓音楽関係史 / 京城放送局 / 音楽放送 / 植民地朝鮮音楽 / 植民地朝鮮の日本音楽 / トランスカルチュレーション / 植民大都市京城 / 近代音楽文化 / 在朝鮮日本音楽 / 植民地朝鮮音楽文化 / 音楽関連記事広告 / 京城放送局JODK / 京城日報 / 戦時音楽 / 植民音楽政策 / 植民地朝鮮 / 植民大都市 / 音楽文化 / 京城 / 在朝鮮日本人 |
研究開始時の研究の概要 |
朝鮮では朝鮮総督府の主導で資本主義が制度化され、産業全般的に量的な成長を成していた。資本主義社会が定着する中、音楽、映画、演劇、小説、スポーツなどの文化商品は中産階級の成長と都市文化の展開を反映し、「趣味―余暇―文化―教養―近代―文明人」は同じ枠で分類されていた。都市中間層は、文化と趣向の創造者であり、大衆文化の享受者であり、大量生産と大量消費を維持する資本主義の主体者であった。当時、高級趣味の代表格であった音楽は、文化生活において必要不可欠なものであった。本研究は、植民地朝鮮の最大都市である「京城」を中心とした在朝鮮日本人の音楽活動に着目し、植民朝鮮の社会の実態に迫るものである。
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研究実績の概要 |
本年度の研究実績として、3回の研究口頭発表(国内学会のみ)と、1編の学術論文、2冊の単行本(単著1冊・共著1冊)刊行を挙げることができる。 また、10年前から進めてきた『京城日報』に掲載されている「京城放送局(JODK)の番組編成表」を『京城放送局(JODK)ラジオプログラム集成(1925~1945)』として金沢文圃閣にて出版が決まった。まずは、10年分(1925-1934年)の集成と『植民地朝鮮のラジオ放送ー近代マスメディアとしての京城放送局(JODK)』別冊(論文集、共著)、『付録 朝鮮放送協会資料』別巻(資料集)を2023年度8月と、2024年2月に分けて出版する予定である。集成、別冊、別巻は、日本「外地」朝鮮における放送内容を全体的に把握できる基礎資料としてラジオメディアと関わる歴史学、社会学、文学、言語学、音楽学、人類学、教育学などの研究分野において大いに貢献できると期待される。 そして、韓国においても『京城放送局(JODK)音楽番組目録集』(民俗苑)が決まり2023年度には出版される予定で、『音楽文化の日本近現代史』(仮、青弓社、共著)も2023年11月に出版を予定している。 なお、2023年度東京大学出版助成に採択され、第4回東京大学而立賞を受賞したので『植民地朝鮮の西洋音楽ー在朝鮮日本人音楽家の活動をたどる』(青弓社)を2023年度に出版を予定している。2021年7月に韓国で出版した『植民地朝鮮の西洋音楽受容と日本人の音楽活動』(民俗苑、単著、韓国語)は、大韓民国文化観光体育部主催の2022年世宗図書学術部門選定図書に選定され、いい結果を残すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
その理由は、本年度の研究成果として、3回の研究口頭発表(国内学会のみ)と、1編の学術論文、2冊の単行本(単著1冊・共著1冊)刊行したからである。特に、2022年4月に韓国で出版した『植民地時期在朝鮮日本人の日本音楽普及・享受と展開様相』(民俗苑、韓国語)は、移住者・植民者の「日本音楽」の享受実態を明らかにし、植民地朝鮮の音楽文化の一面を照射したもので、「日本音楽」は日本人の朝鮮移住に伴い、日本の境界を超え、日本人コミュニティーを中心に受容、普及、展開されていたことについて一部を明らかにした。 また、金沢文圃閣で2023年度8月と、2024年2月に分けて出版する予定の『京城放送局(JODK)ラジオプログラム集成(1925~1945)』『植民地朝鮮のラジオ放送ー近代マスメディアとしての京城放送局(JODK)』別冊(論文集、共著)、『付録 朝鮮放送協会資料』別巻(資料集)の編集作業が全て終わり、出版物を待っているところである。このように、日本「外地」朝鮮における放送内容を全体的に把握できる基礎資料を確実に提供できるように進められており、それに伴う研究も着実に行っている。 さらに、今までの研究の評価が韓国、日本で認められることにもなった。2023年度東京大学出版助成に採択され、第4回東京大学而立賞を受賞したので『植民地朝鮮の西洋音楽ー在朝鮮日本人音楽家の活動をたどる』(青弓社)を2023年度に出版を予定している。2021年7月に韓国で出版した『植民地朝鮮の西洋音楽受容と日本人の音楽活動』(民俗苑、単著、韓国語)は大韓民国文化観光体育部主催の2022年世宗図書学術部門選定図書に選定され、いい結果を残すことができたからである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、研究計画書に書いたとおり研究を進めたい。来年度には様々な出版が確定されており、その作業を進みながら、新たな研究にも取り込みたい。 本研究は、植民地朝鮮(1910~1945)の最大都市である「京城」を中心とした在朝鮮日本人の音楽文化に着目し、植民地朝鮮における音楽社会の実態に迫るものである。既存の研究成果により、当時の朝鮮人と在朝鮮日本人との関係はより多様で複雑であったことが浮かび上がってきた。例えば、植民地朝鮮における京城放送局ラジオ番組からみた音楽のトランスカルチュレーション(Transculturation)の様相は、日本の外地であった朝鮮の音楽環境を如実に反映している。植民地朝鮮は、単一民族、単一言語で区切られる事なく、人々や物、情報、資本などが移動し、様々な人々により、様々な音楽文化が接触させられ、その関係性が結ばれ、時にはその形を変えた文化が再構成・再構築されていた。内地における朝鮮音楽中継放送や朝鮮人の日本音楽活動からも見えるように、異文化間の交流は、統治権力によってその流動性が保証され、文化的範囲が拡大していたのである。植民地に現れる音楽のトランスカルチュレーションは、植民地朝鮮にも生じており、日本音楽文化と朝鮮音楽文化が互いに移行されていたのである。 「植民地朝鮮」という特質を充分に理解した上で、「統治権力」と「在朝鮮日本人の音楽活動」からみえてくる変容・衝突・葛藤などの全体像を描き出し、その実態から見えてくる「朝鮮の音楽文化」を今まであまり言及されてこなかった日本と韓国の「音楽関係史」「音楽文化史」として再構築できるように、研究に励みたい。今後の研究は、このような問題意識の下で、研究発表に力を注ぎ、研究成果を日本のみならず、国際会議などを通じて広げるように尽力したい。
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