研究課題/領域番号 |
21K12872
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01050:美学および芸術論関連
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
町田 樹 國學院大學, 人間開発学部, 助教 (70896258)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | アーティスティックスポーツ / フィギュアスケート / 舞踊論 / クロスジャンル論 / 比較芸術 / 芸術批評 / スポーツ史 / 舞踊史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フィギュアスケートや新体操などの音楽を用いた表現行為が内在する芸術的スポーツにおいて、「競技(スポーツ)文化」と「舞踊(ダンス)文化」という異なる二つの文化が、いかに歴史的および美学的に相互交渉してきたのかを、初めて体系的に明らかにすることを目的とするものである。 具体的に本研究では、芸術的スポーツの中で最も成立が早く、かつ舞踊的性質の色濃いフィギュアスケートを中心に、歴史、作品、作者、社会制度などの諸側面を総合的に分析していくことで、芸術的スポーツをめぐる、[1]歴史の構築、[2]批評や作品分析に関する理論の開発、[3]マネジメントや鑑賞者教育の方法の確立、を目指していく。
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研究実績の概要 |
2022年度は、昨年度に策定した研究計画(推進方策)の通りに研究を実施し、主に以下の三つの成果を得ることができた。 [1]1970-80年代に見られるフィギュアスケーターと舞踊家の協働創作に関する調査研究を全て完了させ、「フュージョン」や「コラボレーション」の芸術創作技法と、芸術的スポーツおよび舞踊の両文化をめぐる相互交渉史について、新たな知見や理論を導き出すことができた。なおこの研究の成果は、すでに日本比較文学会東京支部例会(2022年11月)にて口頭発表を行っているほか、舞踊学会の学術誌に投稿済みである。また、芸術的スポーツと舞踊のクロスジャンルのみならず、音楽との関係に関する研究にも着手し、フィギュアスケートと音楽の比較芸術論を研究する上で極めて重要な新出資料を数多く収集することができた。 [2]本科研費研究の大きな柱の一つとして、芸術的スポーツをめぐる批評理論の構築を掲げているが、本件についても推進させることができた。具体的には、芸術批評理論をめぐる先行研究を精緻に分析し、それらの理論や研究が芸術的スポーツにいかに応用できるかを検討。最終的に、芸術的スポーツを分析し評価するための批評理論を考察し、その成果をフィギュアスケートと音楽のクロスジャンルをテーマとする『フィギュアスケートと音楽』(音楽之友社、2022年10月)に収録することができた。 [3]本科研費研究の目的である芸術的スポーツの史的記述と批評理論の構築を果たす上で、比較文学比較芸術のディシプリンを習得することが必須である。この点について、今橋映子氏が研究代表者となっている科研費研究(基盤研究B)「比較文学比較文化研究の理論再構築と一般知への還元に関する総合的アプローチ」に研究協力者として参画する機会を得たことで、当該学術分野のディシプリンの習得とその芸術的スポーツ研究への応用方法の検討が非常に捗っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二年目にあたる2022年度の研究計画は主に、①芸術的スポーツとダンスをめぐるコラボレーションやフュージョンを比較芸術論や美学的な観点で分析及び考察し、その成果に基づいて新たなクロスジャンル論を展開すること、②海外に設置された関連博物館(「オリンピック博物館」など)における資料調査に向けた予備調査と研究を実施することの二点であった。 まず、①の研究については、当初想定していた以上に有意義な成果を導き出すことができた。この成果は、芸術的スポーツをめぐる研究分野はもとより、舞踊学や比較芸術論の学術領域においても広く応用可能となる新規的な知見及び理論となると考えている。また、本研究テーマに関する論文は当初1編で完結する予定であったが、上記の通り想定以上の研究成果や発見があったことで、合計3編に増やすことになった。すでに当初予定していた1編の論文は執筆が完了しており、舞踊学会に投稿済みである。残りの2編についても鋭意執筆中であり、2023年夏頃までに日本比較文学会等の関連する重要学会に投稿できる見込みとなっている。 そして②の予備調査については、本科研費研究を遂行するにあたり必要となる資料の整理、必要資料がアーカイブされている機関の把握、デジタルアーカイブで収集できる資料とそうでない資料の見極め(デジタルアーカイブ資料については資料収集をすでに実施)、などを行い、概ね完了させることができた。この予備調査により、本科研費研究を遂行する上で必要となる調査の計画や見通しを具体的に立てることができた。 上記の理由に加えて、研究の成果をおよそ計画通りに口頭発表及び学術論文を通じて公表できたことを総合的に勘案し、本研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価する次第である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画上、三年目にあたる2023年度の研究推進方策は以下の通りである。 ①2023年度中に、「研究実績の概要」欄[1]に示した調査・研究の成果に基づいて、芸術的スポーツと舞踊のクロスジャンル論にまつわる学術論文を3編公表する(うち1編は舞踊学会に投稿済み)。 ②2023年度の8月から9月、もしくは2月から3月にかけて、スイスのローザンヌに設置されている「オリンピック博物館」への資料調査を実施する。この調査については本来2022年度に実施することを予定していたが、COVID-19の感染状況を含む世界情勢に鑑み、やむなく延期することを決断したのであった。本調査を実施し、芸術的スポーツの批評理論や芸術とスポーツのクロスジャンル論を考察する上で欠かすことのできない、芸術競技の歴史的資料を収集する予定である。 ③本科研費研究の目的の一つである芸術的スポーツの批評理論構築に向けて、批評研究の体系的整理を行う。すでに芸術批評をめぐる先行研究については、概ね整理が完了しているため、2023年度7月から9月にかけて、スポーツ批評に関する理論や諸作品の収集と分析を進めていく予定である。最終的に、芸術批評とスポーツ批評の両理論を踏まえながら、芸術的スポーツの批評とはいかにあるべきかを考察し、その成果を学術論文として公表する。 ④2023年度9月から3月にかけては、フィギュアスケートの成立過程に関する歴史研究に着手する予定である。フィギュアスケートの成立には、舞踊やローラースケートなどの諸文化が深く関わっているものと考えられるのだが、従来こうした諸文化による影響が明らかにされたことはなかった。本研究では、昨年度までに収集した資料(新出資料含む)を活用しながら、文化同士の関係性あるいは影響受容関係を解きほぐし、新しいフィギュアスケート史を構築していく。
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