研究課題/領域番号 |
21K12880
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 京都大学 (2023) 東京藝術大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
仲間 絢 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (50869526)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 雅歌 / 花嫁神秘主義 / 聖母マリア / 光学理論 / 花嫁 / 美術史 / イメージ / 中世回帰 |
研究開始時の研究の概要 |
西洋中世の女性性の問題への美術史学の詳細なアプローチは、主に修道女美術における「女性の霊性」のイメージ人類学的考察にみられる。くわえて聖母マリア崇敬の興隆とともに、女性が美術作品の表現の中心に置かれた女性崇拝の時代という特有の文脈を考慮に入れた、より根源的な解明が必要である。そのため、本研究では、聖母マリア崇敬の主要原典であった旧約聖書『雅歌』の花嫁神秘主義に基づく美術作品を多角的に考察する。西洋中世における『雅歌』の幅広い影響力は文献学などの領域で近年注目されているが、中世のみならず、近世から近現代の中世回帰についても分析対象を拡げ、美術史学における女性性研究の新たな方法論を提唱したい。
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研究実績の概要 |
本年度は、ゴシック期、とりわけ、第4回ラテラノ公会議以後の13世紀の視覚的イメージの鑑賞法における、当時の人間の眼の構造と視覚のモデルを説明した光学理論との関連性に『雅歌』の花嫁神秘主義が果たした役割について考察した。キリストの身体性と人間性、そして受肉を実現した媒体としての聖母マリアの子宮への憧憬が高まるなか、視覚を霊的な領域だけでなく物理的な次元でも解釈する神学的言説と相まって、自然哲学の科学的思想の潮流、特に人間の視覚過程を説明する光学理論と芸術実践は密接に結びついていた。 光を構成するスぺキエスの物質性、および物理的効果が、ゴシック美術に神の奇跡をダイナミックかつ相互的な視覚的方法で表現することを可能にし、キリストの花嫁としての個人的な宗教的体験が、この現象を強化し発展させる要素であったと主張した。肉体の記憶に刻まれたキリストの身体的ヴィジョンによる救世主との同一化という身体的変容は、感情を喚起するまなざしの触覚的物質性の相互作用によって表現され、キリストとその花嫁の神秘的完成へと昇華される。ゴシック美術の創作と鑑賞の基本的な要素としての視覚の議論と、この歴史的文脈におけるゴシック的イメージの触覚性と身体性を再検討し、光学理論におけるスぺキエスの物質性が花嫁神秘主義を通してゴシック美術、そしてルネサンス美術に与えた影響を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の口頭発表2件と国内の雑誌掲載1件、および、海外の雑誌への論文の投稿を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、「閉ざされた庭」の表象に重ねあわされた聖母マリアの子宮への憧憬、そして、それを促進した『雅歌』の花嫁神秘主義における神学的議論との関連性についてより考察を深めていきたい。また、「貴婦人と一角獣」の題材をはじめとして、ゴシック期の宮廷文化における貴婦人への崇拝に『雅歌』の花嫁神秘主義が与えた影響についても、宮廷恋愛詩にくわえて、当時の聖母マリア表象との関連から分析していきたい。
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