研究課題/領域番号 |
21K12884
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
向井 晃子 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (70848465)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 前衛書 / 井上有一 / 日本近代美術 / 周縁 / 美術制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1957年にサンパウロ・ビエンナーレに出品し、現在も国内外で評価が高く一般にも人気のある前衛書家の井上有一について、今回資料所有者から閲覧許可を得られた膨大な量の自筆日記と制作記録を調査し、井上の革新的な制作活動と受容、彼が支えられた環境を明らかにする。そして、明治期に日本の近代美術制度から周縁化された書から生まれ戦後に隆盛した前衛書を美術制度に対する周縁からの問い直しという視点から捉えた、より広い美術史の範疇から調査結果の考察を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究では、戦後の一時期に隆盛となった前衛書の活動を行った作家の中でも、1957年にサンパウロ・ビエンナーレに出品し、現在も国内外で評価が高く一般にも人気のある前衛書家井上有一について、資料所有者から閲覧許可を得られた自筆日記と記録を読み解いていく。本研究の目的は、明治期になされた「美術」の分類を問い直すような革新的な試みを行ったものの周縁化された立場にあった井上の革新的な制作活動と受容、彼が支えられた環境を明らかにし、美術制度に支えられなかった芸術表現の状況の一端を検討し、それによって、美術制度の枠外にある伝統芸術が近代に遂げた展開の一面を美術史研究に加え、欧米とは異なる歴史と文化がある日本の美術史の特徴を制度外から逆照射する形で 明らかにしたいと考えている。 今年度は、自筆日記を所有するギャラリーへの訪問調査を月1から2回程度を目安に、先方と予定調整を図りつつ実施した。また、関連する展覧会調査と資料調査を複数回実施した。ギャラリーへの訪問調査では、前年度に立案した研究推進方策の通り、日記帳一冊毎にその全体を概観する方向で確認を進める資料の閲覧と、必要に応じたメモ取りを行った。その結果、井上が精力的に活動した1960年代の日記について、一通りの閲覧を完了した。1960年代を通じて、井上の自筆日記では、まとまった文章というよりは制作メモのような記述が多くなされており、井上の活動が詳細に記録されている状況ではなかった。これは調査を行ったからこそ判明した成果であり、引き続き、自筆日記の調査を継続する。今後の研究の展開としては、まず概要を把握するという当初の方針を保持しつつ、調査資料の状況に応じて、成果物としては、論考としてまとめるだけでなく、日記の記載状況を紹介するような方向性も範疇に入れ、適切に成果物を公表する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症蔓延の影響で調査が大幅に遅れたところから、鋭意進めているため。また、プライベート面での、親の介護の手助け、伴侶の海外転勤の発生という、予想外の出来事も発生した影響もあった。
|
今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症については、社会活動が再開され、訪問調査が行いやすい状況となったので、一層積極的に調査を遂行する。ただ、今年度末から来年度にかけて訪問調査先のギャラリーが移転するため、先方の事情も考慮しつつ、実施を図る。 研究を遂行する上での課題としては、今年度までに調査を行った1960年代の井上の自筆日記では制作メモのような記述が多く、活動状況が詳細に記録されているわけではなかった点がある。これらへの対応としては、前年度に立案した推進方策の、日記帳一冊毎にその全体を概観する方向で確認を継続する。また、成果物は、調査資料の状況に応じて、論考としてまとめるだけでなく、日記の記載状況を紹介するような方向性も範疇に入れ、適切に公表する。
|