研究課題/領域番号 |
21K12890
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01060:美術史関連
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研究機関 | 佛教大学 (2023) 大阪大谷大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
苫名 悠 佛教大学, 歴史学部, 講師 (50866530)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 院政期絵巻 / 後三年合戦絵巻 / 勝絵 / 承安五節絵 / 後白河院 / 蓮華王院 / 嗚呼 / 放屁合戦絵巻 / 彦火々出見尊絵巻 / 信貴山縁起絵巻 / 模本 / 伴大納言絵巻 / 後崇光院 / 似絵 / 宝蔵 |
研究開始時の研究の概要 |
12世紀に制作された院政期絵巻の現存諸作品について、これまで多くの研究が蓄積されてきたが、一方で原本が現存しない諸作品に関する研究は極端に少ない。それゆえに現状ではこれらの作品をめぐる院政期絵巻史上の論点が多く見落とされている。 本研究は、原本が現存しない院政期絵巻の諸作品を取り上げ、現存する諸作品との比較などによって各作品の美術史上への位置づけを行い、その過程で見出された院政期絵巻史上の諸論点について個別に検討を加えることにより、院政期絵巻に関する議論をより多角的なものとすることを目指すものである。
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研究実績の概要 |
本年度の成果としてまず挙げるべきは、本研究の課題に直接的に関わる論文7編を収めた単著『失われた院政期絵巻の研究』(思文閣出版、2024年3月)を刊行したことである。同書所収論文7編のうち2編は書き下ろしで、前者は承安本《後三年合戦絵巻》、後者は《勝絵》を主たる考察の対象とするものであった(前者タイトル:「承安本《後三年合戦絵巻》の制作目的と院政期絵巻における位置について」、後者タイトル:「《勝絵》の美術史的位置について」)。これら2作品は、いずれも原本が失われた院政期絵巻の作例と目されるものであるが、従来美術史学において、両作品についての十分な議論は行われていなかった。上記の2編は、これら2作品を美術史上に定位することを試みたものであり、各論文における考察によって、その美術史的位置は一定程度明確になったと考えられる。本研究の趣旨に即した、重要な成果であったといえよう。 上記に加えて、今年度も本研究の課題に関わる以下の作品の調査を実施した。①愛知県個人蔵《勝絵》模本3種、②東京都個人蔵《承安五節絵》、③愛知県長存寺蔵《承安五節絵屏風》である。①は近世における《勝絵》模本の多様さを端的に示すものであり、同作品の受容史を探るうえで貴重な作例であった。②・③はいずれも、《承安五節絵》原本の図様を最も正統的に伝えていると目される、住吉如慶の手による《承安五節絵》模本との間に密接な関係を有すると考えられる作例であった。これらの作品のデータが得られたことも、今年度の重要な研究成果として挙げられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」において記した通り、論文の執筆や研究成果の公表は順調に進展している。また、原本が失われた院政期絵巻諸作品の模本調査も着実に進められている。これらの調査による知見をいかに解釈するかということについては、未だ十分に検討が進められておらず今後の課題であるが、ともあれ、以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
原本が現存する院政期絵巻の作例である《病草紙》との関係が従来指摘されている、《三老人巻》(模本のみ現存)の調査を実施する予定であり、その知見に基づいて論文を執筆する予定である。また、今年度の調査による知見などに基づき、複数の研究協力者にそれぞれ論文を執筆していただく予定である。これらの論文は、本科研の研究成果報告書として一冊の論集にまとめる予定である。
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