研究課題/領域番号 |
21K12898
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分01070:芸術実践論関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
岡 千春 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (80761593)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ダンス / 高齢者 / 即興表現 / 心理フレイル / 高齢女性 / 身体表現 / フレイル |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルスの影響下において、高齢者施設では外部講師を招いた運動療法や社会的活動が制限され、高齢者のフレイルは三側面それぞれで進行していると予想される。2021年以降、高齢者への認知症・フレイル予防、進行抑制は切迫した課題となるだろう。 介護予防、認知症研究の中でも、ダンスに着目した研究は少なく、さらに創造的身体表現としてのダンス活動や、座位(車椅子)でも参加できるダンス活動を対象とした研究は見当たらない。 本研究では、即興的な身体表現を含むダンス活動が高齢者の心理症状へ与える効果を明らかにするとともに、心理症状を改善・予防するダンスプログラムを検討することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究では、高齢者施設におけるダンスのフレイルへの影響を明らかにすることを目的として、主に文献調査、観察調査を遂行している。対象とした施設では新型コロナウイルス感染予防の観点からダンスなどのレク活動を注視していたが、2023年9月より再開され、月に1~2回のダンス活動を再開した。2023年度においては、施設でのダンス活動3回分の記録映像をもとにエピソード記述法によって高齢者個々の変化のプロセスを抽出することを試みた。ダンス活動に参加している要介護の高齢者を観察することで、以下のことが明らかになった。 まず、ダンス活動の中でも、イメージの想起から生じる自己表現や、個別の接触がプログラムに含まれていることによって初めて生じる変化がある、という点である。即興的な表現のセッションによって、ダンスの間主観的コミュニケーションとしての側面がより強く体験できるようになり、活動中や参加後の気分や、意欲、他者との交流へ前向きな変化が現れる可能性があると考えられる。高齢者はダンスプログラムを通して、自己への気づき、自己・他者を肯定する機会、他者との交流の質を高め拡げていくことで、日常生活における自己理解、他者理解につながり、QOLの向上が見込めると予測される。そしてプログラムには、イメージ想起と触覚へのはたらきかけが鍵となることが示唆された。イメージを想起させ、五感、特に触覚にはたらきかけた、身体接触を含む即興表現をダンス活動の中に設けることは、個々の参加者にとって間主観的コミュニケーションの効果をより強めることがうかがえ、個々人の創造的な即興表現の創出はQOLのうち特に心理面にポジティブな影響を与えると結論付けた。以上の結果については下記の学会大会において発表した。 岡千春(2023)高齢者施設におけるダンスプログラム研究―即興表現の特性と影響に着目して―, 第75回舞踊学会大会,東洋大学
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
施設側の都合により定期的な活動実施が困難な状況である。したがって当初の予定のように毎週1回3か月、という調査設定が実現できないため、介護スタッフへの質問紙調査が遂行できず、映像記録を撮る方法にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように、映像記録を継続し、エピソード記述を重ねていくことで、プログラム中の高齢者の変化についてより詳細に考察していく。さらに、QOL調査などの質問紙調査は難しいが、介護スタッフへのインタビュー調査を行い、活動の特性や参加者の変化について、客観的な視点からも捉えることとする。これらの考察を学術論文としてまとめ、2024年度内に投稿する。
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