研究課題/領域番号 |
21K12918
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
|
研究機関 | 尾道市立大学 |
研究代表者 |
吉田 宰 尾道市立大学, 芸術文化学部, 講師 (70878230)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 西村遠里 / 居行子 / 万国夢物語 / 後藤梨春 / 鶴本平蔵(常春、望雲堂) / 書誌学 / 杉田玄白 / 版本書誌学 / 日本近世文学 / 日本近世思想 / 日本近世科学 / 天文暦学 / 本草学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は天文暦学や本草学を介した文化交流圏を背景とする、18世紀を中心とした日本近世文学・思想史の解明を目指すものである。 これまでの人文科学の研究では、自然科学との関わりについて十分な考証を及ぼすことなく、近世期の文学や思想史について多く考察してきた。しかし、そうした研究方法のままでは、今日ほど人文科学と自然科学の明確な区分意識がなかった当時のそれを十全に理解することはできない。 そこで、本研究ではこうした問題点を踏まえ、18世紀を生きた天文暦学者の西村遠里、および本草学者の後藤梨春・平賀源内らを手がかりに、天文暦学・本草学的文化交流圏の実態の把握に努め、上記の研究目的を達成していく。
|
研究実績の概要 |
本年度は、主に以下三つの研究を行った。 一つ目は、西村遠里『居行子』『万国夢物語』を中心とした原本の悉皆調査である。具体的には次の15の所蔵先に赴き、原本の書誌調査を行った。国立国会図書館、杏雨書屋、国立公文書館、早稲田大学中央図書館、東京都立中央図書館、東京大学総合図書館、東京国立博物館資料館、佐賀県立図書館、九州大学附属中央図書館、新潟大学附属中央図書館、酒田市立図書館、秋田県立図書館、弘前市立弘前図書館、東北大学附属図書館本館、福島県立図書館。書誌調査では基本的な書誌事項を確認したほか、とくに『居行子』については全丁の匡郭を採寸し、印刷面にみられる匡郭の傷跡や字形の比較なども行った。こうした調査により、覆刻版を含めた版種の区別を明確にすることができている。 二つ目は、後藤梨春と書肆鶴本に関する考察である。2021年度に「後藤梨春と書肆鶴本の出版戦略」と題する口頭発表(第13回おのみち文学三昧、2021年12月11日、オンライン)を行ったが、その際に得たコメントやその後の追加調査を踏まえて、「後藤梨春編著の出版物と書肆鶴本―『温泉名勝志』『草の蛍』『芭蕉翁行状記』を中心に―」と題する論文(『尾道市立大学日本文学論叢』第18号、2022年12月)を発表した。 三つ目は、杉田玄白に関する考察である。玄白は後藤梨春や平賀源内らと同じ文化圏に属しており、また漢詩や和歌、俳諧や狂歌、さらには絵画など、多くの文芸にも携わった人物である。そうした玄白を「狂」という視点から捉え直し、「杉田玄白と「狂」」と題する口頭発表(2022年度九州大学国語国文学会、2022年6月5日、九州大学伊都キャンパス)を行った。なお、本発表の内容は一部修正を施した上で、論文(「杉田玄白の諧謔精神―『耄耋独語』を中心に―」、『語文研究』第135号、2023年6月発行予定)として掲載されることが決まっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響により、初年度(2021年度)に予定していた古典籍の実地調査を行えず、その差分が2022年度の研究計画にも影響したため。ただし、既述したように2022年度は多くの実地調査を行うことができ、またこれまでに行った口頭発表などの成果を踏まえ、論文を公にすることもできていることから、研究自体は着実に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は古典籍の実地調査(とくに『居行子』『万国夢物語』の悉皆調査)を引き続き行い、研究の基礎となる書誌情報の収集を可能な限り早く終えることを目指す。またそれらの情報をもとに諸本の分類に関する検討を進め、その上で総合的な考察へとつなげていく。また後藤梨春・平賀源内・杉田玄白などを含んだ文化圏についても考究していきたい。
|