研究課題/領域番号 |
21K12921
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
尾形 大 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00774233)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | チャタレイ事件 / 文壇 / 伊藤整 / 文学と裁判 / 『裁判』 / 川端康成 / 文学の社会的意義 / 文学史 |
研究開始時の研究の概要 |
「文壇」とは非実在的な共同体として、継承と断絶を繰り返しながら変容し続けてきた場である。戦争に同調し協力し扇動した「文壇」は敗戦によって崩壊し社会的信頼を失った。戦後「文壇」が再建され自らの役割を獲得していく過程において、「チャタレイ事件」は重要な意味を持った。 本研究は、同事件をめぐって「文壇」(と文学)の役割がどのように形成・共有されたのか、その現場を伊藤整および同時代言説の調査・蒐集を通して浮かび上がらせることを目的とする。このことは1960年代にかけて「文壇」の歴史が明治期との連続性/非連続性の中で遡及的に見出され、立ち上げられていく現場を下支えする問題へと展開するものと考えられる。
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研究実績の概要 |
2023年度はチャタレイ裁判時の社会と文壇、そしてジャーナリズムの反応・動向に関する調査・研究を進めることが出来た。とくに裁判前後の文壇の反応と被告伊藤整のズレについては、10月の日本近代文学会秋季大会にて個人発表をおこない、オーディエンスとの間で有意義な質疑をおこなうことができた。同学会での発表内容に関しては、現在論文にまとめ直している最中である。 また、日本大学の雑誌『語文』188輯に研究論文を発表した。小説『裁判』執筆前後の伊藤整の文学上の推移・展開を整理することを目的とした論文である。戦後講談社から発刊された新雑誌『群像』への意識と具体的なかかわり、そして『日本文壇史』への橋渡しとなる『現代日本小説大系』の編纂と解説の仕事を新たに位置づけたのもである。そこで伊藤が果たした役割とそこで作った文壇内での人間関係、ネットワークを明らかにし、その後のチャタレイ裁判に波及する土壌を可視的に考察した。 加えて、1952年以降の伊藤整の日記の記述を手がかりに、自伝小説『若い詩人の肖像』への展開を大正大学で開催した私小説研究会(代表・梅澤亜由美)において発表する機会を得た。「戦後雑誌における自伝的言説の共有をめぐる一考察―伊藤整『若い詩人の肖像』と掲載誌『中央公論』を例に―」という題目で、掲載雑誌の性格を伊藤整がどのように認識し、執筆する小説を変えていたのかを考察したものである。伊藤整という作家が読み手をどのように認識し、位置づけたかを考えることにつながり、すなわち『裁判』での対社会、田居読者意識の内実を検討するうえで必要な研究となっている。 最後に、伊藤整の著作権継承者である伊藤礼さんにインタビューした内容を、小樽文学館の『館報』第47号に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始初年度と第二年度が新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない現地調査に赴けなかった点が遅れの原因となっている。 また、伊藤整の著作権継承者が2023年9月に亡くなられたことを受けて、新規資料の調査や使用に関してペンディングせざるを得ない状況にあることも遅れの原因として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に引き続き、チャタレイ裁判を中心に被告および文壇、ジャーナリズムの反応を整理・調査していく。そのために『裁判』の異同を表にまとめる作業を、コロナの影響で遅れているが継続してまとめ上げていく。一方で著作権継承者が代わったことを受けて、先方のご負担にならないように配慮しながら、資料の調査等を進めていきたいと考えている。
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