研究課題/領域番号 |
21K12922
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
木村 政樹 東海大学, 文学部, 特任講師 (90869679)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 文学と革命 / 批評言説 / 文化運動 / 概念史 / メディア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、1950-60年代日本の「文学と革命」をめぐる批評言説がいかに変容し展開していったのかを明らかにする。ナショナリズムや社会思想、文学・芸術等に関連する批評用語の歴史を戦前期に遡って実証的に検討しながら、作家およびテクストを取り巻くメディア環境の位相を問題化することによって、1950-60年代における文学・思想のネットワークを通時的・共時的に捉え直したい。
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研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、1950-60年代の「文学と革命」をめぐる批評言説について調査を行なった。それと併せて、批評言説の来歴を把握するため、戦前期の批評についても考察した。また、考察を進めていくなかで、批評という言説を捉えるための方法について整理する必要を感じ、批評史研究や文学史研究のあり方についても研究を行なった。 研究成果の一部は、論文化した。「文芸の「評価」をめぐって――本多秋五「文芸史研究の方法に就いて」論――」(『日本近代文学』第106集、2022年5月)では、文芸評論家の本多秋五が、プロレタリア文化運動の時期に「文芸史研究の方法」を考察したテクストについて論じた。「批評とはなにか――「革命的批評」から再考する」(『湘南文学』第58号、2023年3月)では、「批評とはなにか」という問いを立ててそれに答えることを通して、批評史研究の方法を再考した。「「将棋と文学研究」について――文学史とは別の仕方で」(『将棋と文学スタディーズ2』2023年3月)では、「文学史」とは別の歴史的な研究の方法について、近年の研究動向をふまえつつ論じた。 また、『日本近代文学大事典』増補改訂デジタル版、『坂口安吾大事典』でいくつかの項目を執筆した。担当した項目のなかには、「平野謙」「本多秋五」「荒正人」たち『近代文学』同人の名前も含まれている。 そのほか、研究会での発表を行なった。とりわけ、2022年2月に青土社より刊行した『革命的知識人の群像 近代日本の文芸批評と社会主義』について、公開読書会や書評会で議論を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度も、1950-60年代の「文学と革命」をめぐる批評言説の変容および展開に関する調査を継続した。今年度はとりわけ「近代文学」概念を中心に調査を進めた。基本的には当初の計画から大きく逸脱することなく進んだが、状況に応じて研究のスケジュールや内容を柔軟に変更していくこととなった。 まず、当初は実施することを予定していた調査のための出張を行なうことができず、東海大学付属図書館の資料を中心として調査を進めた。これにより、作家の蔵書や書簡についての調査は遅れが出ている。とはいえ、本研究の目的は批評言説の歴史的な展開を捉えることを主眼としており、総合的にみれば、研究はおおむね順調に進展しているといえる。 また、研究を進めていくうえで、研究の方法に関しても論文化する必要が出てきた。その成果の一部はすでに公開しているが、今後の研究でもさらに掘り下げた考察を行なっていくことを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通り、1950-60年代の「文学と革命」をめぐる批評言説について調査・研究を進めていく。2023年度は、「市民社会」という概念を中心に調査する。新型コロナウイルス感染対策に留意しつつ、調査のための出張を行なう予定である。 戦後の文芸批評の言説を考察していくなかで、戦前期の批評言説の重要性がますます明らかになってきた。戦後に流行した多くの文学・思想関連用語は、すでに戦前期において用いられており、その歴史的な文脈のなかで諸概念の連関が構成されている。そこで、戦前期の批評についても続けて考察を行なっていく。 また、研究を進めていくなかで、研究の方法的な問題についても活字化する必要が生じた。これは新たに見つかった課題だが、研究の方法・理論について考察を深めることは、これまで行なってきた批評史研究をより発展させるためにも必要だと考えられる。そこで、今後は批評言説の分析の方法や理論の研究についても重点を置くこととする。
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