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金融資本主義胚胎期としてのヴィクトリア時代の小説における責任主体表象に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 21K12949
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分02030:英文学および英語圏文学関連
研究機関広島市立大学

研究代表者

原 雅樹  広島市立大学, 国際学部, 講師 (30783500)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワード資本主義 / 倫理 / 小説 / 冗談 / 文字通り性 / 多義性 / 曖昧性 / 貨幣 / 商品 / 芸術 / 階級 / イデオロギー / 19世紀イギリス小説 / 金融 / ヴィクトリア朝小説 / 金融資本主義 / 責任主体 / 偶然 / トマス・ハーディ
研究開始時の研究の概要

本研究は、ヴィクトリア時代の小説家たちが、社会の金融資本主義化に直面しながら、いかに責任主体をめぐって思考していたのかという問題に取り組む。近年の金融文化史研究によれば、この時代には金融資本主義化が加速した一方で、人々は金融を偶然に支配された賭博とみなし批判していた。そうした状況で、自由意志と責任を両輪とする近代的道徳主体モデルが通用しなくなることが、まさにそのモデルを描く文学形式として近代に誕生した小説において問題となった。本研究の目的は、いかに当時の主要な小説家たちがその問題に対処し、責任主体の代替モデル――非意図的な偶然の結果に責任を負う主体――を産み出したのかを明らかにすることである。

研究実績の概要

今年度はトマス・ハーディの小説『キャスタブリッジの町長』を主な研究対象とし、そこにおいていかに作家が資本主義を批判しているのかという問題を設定し、まず学会で研究発表をおこない、それを踏まえて最終的に査読付き論集への論文投稿をおこなった(出版は24年度か25年度の見通し)。その結果わかったのは、ハーディは、この小説において、資本主義に対して冗談の倫理と呼びうるものを対抗させようとしているということである。近代資本制社会の中心にあるのは貨幣という記号であり、その特徴の一つはあらゆるものを価格という数値によって一義的に代理表象すること、すなわち文字通り性である。この小説においてハーディが描く近代社会は、貨幣という文字通り性を強く帯びた記号が支配的になった結果、言語までもが貨幣のように額面通りに受け取られるようになり、多様な人々の共生がうまくいかなくなっている。ハーディは、これに対抗するように、冗談という曖昧で多義的な言語運用を好む登場人物を小説の主人公として設定している。たしかに物語全体はこの主人公ヘンチャードが没落し共同体から排除されてゆく過程を描いている、ということはつまり、冗談の敗北の過程を描いているといえる。だが、同時に注目すべきことに、小説の読者はヘンチャードの人生をさまざまに解釈しながら読み進めることになっているのである。要するに、冗談好きなヘンチャードの敗北を描くこの小説自体は多義的なのである。作家ハーディは多義性に満ちた小説を資本主義社会のなかに流通させることで、人々の多義性への感性を養い、多様な人々の共生が可能になるような余白を作り出そうとしているのである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度から、当初の計画にはなかった論点であるジェンダー/セクシュアリティの問題を考察に含めようとしており、資料を集めつつ研究を深めているが、まだ具体的な成果になっていない。これに取り組むのが次年度の主な課題である。

今後の研究の推進方策

いまだ課題として残っているディケンズの『我らが共通の友』に関する研究を進める一方で、ハーディの『テス』における性の問題に決着をつけ論文にしたい。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (2件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] アヘンのような小説、『サイラス・マーナー』――近代資本主義社会におけるパルマコンとしての言語芸術2022

    • 著者名/発表者名
      原雅樹
    • 雑誌名

      広島国際研究

      巻: 28 ページ: 89-99

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 『キャスタブリッジの町長』と冗談の倫理2023

    • 著者名/発表者名
      原雅樹
    • 学会等名
      日本英文学会関西支部第18回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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