研究課題/領域番号 |
21K12952
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
古井 義昭 立教大学, 文学部, 教授 (30815634)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | ハーマン・メルヴィル / 他者 / 個人主義 / 共同体 / 情動理論 / 倫理 / 倫理批評 / アメリカ文学 |
研究開始時の研究の概要 |
Herman Melville(1819-1891)による諸作品を「他者」という観点から包括的・多角的に論じる。本研究は、 様々な批評理論・アプローチを「他者」をキーワードに横断し互いに接続することで、メルヴィル作品における他者とは何か、そしてメルヴィルは他者の存在を文学作品を通じてどのように表象したのか、という点を包括的に論じる。また、メルヴィルのデビュー作である Typee(1846)から彼の遺作Billy Budd, Sailor(1924)までを網羅することで、メルヴィルの作家キャリアにおける他者の問題に対する取り組みの軌跡を追うことを目的とする。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、昨年度に引き続きカリフォルニア大学バークレー校でのサバティカル(23年9月まで)を利用して、メルヴィルに関する単著の執筆に注力した。ホスト教員であるサミュエル・オッター教授の助言も仰ぎながら執筆を行い、出版社へ草稿を提出したところ、審査の上で無事に出版を決めることができた。その成果が単著『誘惑する他者:メルヴィル文学の倫理』(法政大学出版局、2024年)である。本研究課題の最終年度を前にして、最大の成果を出せたことに大きく安堵している。 一方で、今回の単著に含まれていない、メルヴィルの『戦争詩集』に関する英語論文も執筆し、それを海外ジャーナルに投稿した。査読審査の結果、修正要求を求められたので、改稿のうえで再提出を行った。現在は再度の査読結果を待っているところである。 口頭発表に関しては、23年4月にはHouston Christian Universityへフルブライト・プログラムの一環で招聘され、全学向け講演を一つ、さらには授業を三つ行った。いずれも上記のメルヴィル研究に関わるものであり、一般の聴衆に向けて自分の研究を説明する貴重な機会を得た。 さらに6月には、メリーランド大学で開催されたアメリカの初期アメリカ学会にて、初期アメリカ文学における「アサライム」概念についての発表を行い、他者を包摂するとともに排除も行うというアメリカ政治の力学について議論をした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
上記のように、研究課題の目標であった単著をすでに刊行することができ、当初の予定より早く目標を完遂することができた。これはサバティカルによって時間的猶予ができ、研究に集中できたことが大きい。ただ、本研究課題の一部として、他のメルヴィル作品に関する論考も執筆予定であるので、それについても引き続き研究を行ってゆきたい。
|
今後の研究の推進方策 |
現在のところ、『戦争詩集』についての論文が海外ジャーナルにて査読中であり、結果を待っているところである。結果次第ではさらに違うジャーナルに投稿を目指す。 また、国内外の共著論集三つに論文を執筆予定であり(国外二つ、国内一つ)、そのうち二つの英語論集ではメルヴィルを扱う予定である。一つはメルヴィルと日本の関係性に関する論考、もう一つはメルヴィル作品における孤独の諸相を探るものになる予定であり、それらの論考でもメルヴィルの他者性に関する議論を深めていきたい。また、国内の共著論集ではメルヴィルではなく詩人のエミリー・ディキンソンを扱う予定であるが、その論文では本研究課題で取り組んだ「他者性の倫理」という問題意識を応用して論じる予定である。
|