研究課題/領域番号 |
21K12966
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
齋藤 山人 日本大学, 芸術学部, 講師 (60850534)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | ジャン=ジャック・ルソー / 自伝的著作 / 聖書 / 間テクスト性 / 知識人 / 新語法 / 言語 / 野蛮 / 自己表象 / 書簡 / 自伝 / 著名性 / 作家像 / モード |
研究開始時の研究の概要 |
フランス啓蒙期の思想家ジャン=ジャック・ルソーは、『告白』や『対話』、『孤独な散歩者の夢想』といった自伝的著作によっても知られている。ルソーが著作の中で自身の作家像を表象しつつ、読者と特異な関係を結んでいたことはこれまで多くの研究者によって論じられてきた。本研究では、特に『社会契約論』と『エミール』が発禁処分を受けた後の論争に注目しつつ、論敵や支持者によって誇張されたルソー像を、彼が自己表象の際に巧みに援用した戦略について分析する。著名人の自伝的記述とパブリック・イメージが単に対立するものではなく、両者が共犯関係を結ぶ側面に関心を寄せている点に本研究の特色がある。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、ジャン=ジャック・ルソーの自伝的著作、特に『ルソー、ジャン=ジャックを裁く』(通称『対話』)の読解・分析作業を進めた。この著作において、ルソーが作家としての自らの立ち位置をどのように表現し、読者からの信用をいかに確保しようとしているのか明らかにしようと試みた。その際に特に注目したのが、同時代のフランス語訳聖書との関係である。18世紀当時にルソーが参照することができたと考えられる、いくつかの聖書の記述(特にマタイ福音書)と『対話』のテクストを比較することによって、彼が自伝的著作において展開した、自己表象の戦略を分析した。特に、ルソーが自らの迫害・流浪を描く際に、聖書におけるイエスの形象が巧みに援用されている。2023年度は、『対話』のコンディヤック草稿を分析することによって、上記の分析に根拠を与え、2024年3月の欧米言語文化学会・第145回例会において研究発表を行った。また、この研究作業の過程で、インテレクチュアル・ヒストリーや知識人の歴史に対して、さらなる関心を寄せる必要に迫られた。そのため、2023年の夏季にフランスに渡航し、パリ・フランス国立図書館において、ルソーの自伝的著作の分析に必要な文献・資料の収集を行った。また、その機会にフランス国立公文書館でも調査を行い、ルソーの伝記的事実に関わる資料を参照した。以上の研究結果は、2024年度の『芸術研究所紀要』に投稿予定の研究論文において、部分的に発表される予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、2023年度内に研究論文を発表する予定であったが、2024年3月の欧米言語文化学会・第145回例会における口頭発表以外に、研究成果の報告を行うことができなかった。その理由として、18世紀におけるフランス語訳聖書に関する情報の入手に苦労したことと、知識人の歴史という大きな視点で本研究の方向性を見直したことにより、先行研究の整理・考察に時間をかけたことが挙げられる。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、2023年度に引き続いてジャン=ジャック・ルソーの自伝的著作、特に『対話』を読解しながら、その中に見られる間テクスト性を分析する予定である。『対話」のテクストが、宗教の問題を通じて、論争的著作『山からの手紙』と関係を持っている点については、前年度の研究作業によってすでに先鞭をつけている。今後は二つの著作の関係性を、さらに総合的に考察する予定である。その際に重要な論点となるのが、イエスに対するルソーの評価である。キリスト教(教会)の問題と連続しつつも、それとは少し位相を異にする、作家像に関する問題として、二つの著作の宗教論を読み解くことにより、ルソーにおける「知識人」とイエスの形象の関係を考察する予定である。このような観点から、『学問芸術論』とその後の論争、さらに、『寓意的断章』や『エミール』第四巻の「サヴォワ助任司祭の告白」を再読し、ルソーが作家としてのキャリアを始めて以降、「知識人」に対する考察をどのように発展させたのかを分析することにする。研究作業を進めるために、国内各地の大学が所蔵する貴重文献や研究資料を参照する予定である。また、研究成果については、2024年度以降、日本大学芸術学部の『芸術研究所紀要』や各種学会誌に研究論文として投稿する予定である。
|