研究課題/領域番号 |
21K12973
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
|
研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
紺野 達也 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (00506157)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 蔡大鼎 / 琉球漢詩文 / 琉球 / 久米村 / 科 / 福州 / 琉球漢詩 / 漢詩文 / 『欽思堂詩文集』 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近世末期の琉球、特に久米村の士族であり、また琉球の漢文学史上、重要な地位を占める蔡大鼎とその作品を分析、考察するにあたって、彼の『欽思堂詩文集』三巻に収録された青壮年期の大量の漢詩文を総合的に研究する。具体的には、それらの作品に現れる近世琉球士族、特に青壮年期の生活・教養・交流の様相とは何であるのか、そして、それらが文学、特に漢詩文としてどのように表現されているのかを明らかにするものである。
|
研究実績の概要 |
本研究では、近世末期の琉球の久米村の士族であり、また琉球の漢文学史上、重要な地位を占める蔡大鼎の『欽思堂詩文集』三巻に収録された青壮年期の大量の漢詩文を総合的に研究する。 2023年度は、蔡大鼎を中心とした琉球王国最末期の士族の生活や蔡大鼎の教養に関するこれまでの研究成果を踏まえつつ、蔡大鼎と他者との交流に着目した。『欽思堂詩文集』には蔡大鼎が清に派遣される前の作品が収録されているものの、すでに琉球のみならず、中国・日本の人物との交流に言及した詩文もあり、その交流の範囲が広いことが確認される。 本年度は、特に琉球で実施され、極めて苛烈な競争を生じていた官吏登用試験「科」に着目した。第一に『欽思堂詩文集』および『ビン山游草』『続ビン山游草』『続欽思堂集』に収録された「科」関係の詩文に着目することで、蔡大鼎が周囲の琉球士族の「科」受験と合格、また福州の人士の科挙受験をどのように捉えていたかを考察した。また『欽思堂詩文集』所収の作品および『漏刻楼集』の序文などによって、蔡大鼎が受験、合格した「科」について具体的に明らかにするとともに、周囲の人々が彼の「科」受験と合格をどのように位置づけていたかも確認し、「科」をめぐる琉球士族の交流の情況を論じた。さらに、これらの考察を踏まえつつ、唐代以降の中国においてしばしば見られた「下第」すなわち科挙の落第に言及する作品が蔡大鼎には存在しないことにも触れることで、琉球、特に久米村の士族に共有されていた「科」と琉球という国家の関係について検討した。 この他、蔡大鼎が琉球士族の庭園を讃える際に例示した盛唐・王維の「モウ川図」について、特に琉球への影響も大きい近世中国(元明期)における情況も引き続き研究を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料を用いた分析については2021・2022年度同様、順調に進んでいる。海外における論文の刊行は先方の事情で遅れているものがあるものの、一部は刊行されたため「順調に進んでいる」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、これまでの成果を踏まえ、青壮年期の蔡大鼎が『欽思堂詩文集』所収の作品において典故(琉球や日本の文学、故事、伝承も含む)や詩語、詩型、文体、主題をどのように選択、利用したのかに着目し、その表現の特徴を実証的に分析、考察する。 また、今年度は最終年度であるため、これまでの研究成果を改めて文学研究・歴史研究などの学術分野や中国文学研究・琉球学研究といった各国家・地域研究を横断した学際的視座から検討することで、新知見を明示するとともに、今後の課題を示す。
|