研究課題/領域番号 |
21K12974
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
影本 剛 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (60897297)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 近代朝鮮文学 / 迷信 / 在日朝鮮人 / 民衆 / 大阪 / 初期社会主義 / ジェンダー / 関東大震災 / 植民地主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代朝鮮文学を「移動」という観点から再読することを通して、民衆の生活世界を浮き彫りにすることを目的にする。つまりこれまでの研究が「朝鮮」内部で読み取った民衆の姿を、朝鮮半島の領域を超えて検討するものだ。それは、境界を越えて作動する植民地主義と資本主義とジェンダー支配が重なりあう生活現場に立脚して文学表現を読解することだ。まずは近代朝鮮文学の関東大震災表象を検討することを通して、日本の内部で様々な層を形成し移動し生活した朝鮮民衆の表象を整理し、朝鮮の外部から近代朝鮮文学を読解する。その視角に基づいて、独自的な文学世界を切り開いた作家である廉想渉と朴花城の作品世界を検討する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績は、第一に単著論文「近代朝鮮文学と「迷信」:啓蒙と生の原動力」『韓国朝鮮の文化と社会』22号(2023年10月)を発表した。「迷信」というキーワードを軸にして、近代朝鮮文学を読み直した試論である。これは2022年に学会発表したものを論文化したものである。 第二に著書『近代朝鮮文学と民衆』春風社(2024年2月)を刊行した。「民衆」というキーワードを軸に近代朝鮮文学を読み直したものを日本語で発表したことによって、日本の朝鮮研究に一定程度寄与できたと判断する。著書の土台は2020年の博士論文であるとはいえ、ここにも本科研費で研究した成果を反映させている。 上記の二点は、個別作家論や個別作品論ではなく、近代朝鮮文学全体を一つのキーワードでとらえるものである。この点は、これまでの日本語圏の先行研究とは異なる独自性であり、本研究が研究現場に貢献できていると判断する。 第三に学会発表を三本行った。そのうち二つは朝鮮語で進行する場で行った。韓国の研究者から多くのコメントを得て、さらに検討すべき背景や資料について多くの示唆を得た。(1)「1930年代大阪で発刊された『民衆時報』の文芸欄を読む」国際シンポジウム 朝鮮近代文学研究の新たな地平:言語・移動・メディア(於 新潟県立大学 2024年2月23日)、(2)「1930年代大阪で発刊された韓国語新聞『民衆時報』の文芸欄を読む』第19回韓国言語文学文化国際学術大会(於 名城大学、2024年1月27日)(3)「虐殺の余震:植民地検閲下の朝鮮文学に現われた関東大震災」日本韓国研究会第3回研究大会(於 関東学院大学) 2023年8月27日。これらの学会発表の成果は今後論文として公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
持続的に近代朝鮮文学に関する学会発表、および学会発表で得た批判や助言を元にした論文の公表ができている。また、それらの批判や助言を受けることによって、当初予期していなかったアイデアも得ることができており、それは今後の研究の萌芽になっている。 さらに2023年度は多くの韓国の研究者が来日し、直接学術交流をすることが可能であった。また、先鋭的な研究課題をかかえる韓国の大学院生たちからも直接刺激を受けることができた。オンラインでのやり取り以上に研究現場の最新の動向を把握することができ、自らの研究へのフィードバックもより具体的に得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本来の計画通りに進んでいるわけではないが、発表・交流・フィードバック・批判を重ねることで同じように研究を論文化していく。コロナ禍という制約がほとんどなくなったので、韓国など海外での発表も積極的に行いたい。 具体的には、第一に「民衆時報」に関わる研究を論文化させたい。萌芽的なアイデアを研究発表することで、論文化への足掛かりをつくり、研究を前進させたい。
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