研究課題/領域番号 |
21K12983
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
前田 真砂美 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (00617342)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 程度性 / 無標形容詞 / 談話 / 助詞“的” / 〈モノ〉ベース / 比較 / 数量 / 現代中国語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、比較そのもの、または、比較を経て得られた二者間の差を示すことが程度性発現にかかわっているとみられる言語現象について考察し、比較や数量表現のもつ文法的機能が現代中国語における程度性表現にどのように利用されているのかを明らかにする。程度性という高度に抽象的、主観的なものがどのように認識されるのかという点に着目した本研究の取り組みは、中国語における抽象概念のカテゴリー化、言語化に関する研究の発展に寄与するものとなることが見込まれる。
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研究実績の概要 |
程度副詞や程度補語などの有標形式を用いた際の程度性発現のメカニズムを考察するには、これらを伴わない無標の形式との比較が不可欠であるため、裸の形容詞が単独で述語になる例について考察を行なった。形容詞が単独で述語になることについては、従来、それだけでは自立的でなく、「対比」などの手段で不足を補わなければ文が言い切りにならないという方向で議論がなされてきた。本研究は、無標の形容詞述語の談話内での使用状況を観察し、無標形容詞述語には、談話において論拠を提示し、話者の主張や結論に結び付けるという論証機能があり、むしろそのような場面では無標形容詞述語が積極的に選択されることを検証した。考察結果について口頭発表を行ない、単著論文にまとめた(2024年度内に刊行予定)。しかし、考察の対象を使用頻度の高い形容詞4語に絞ったため、考察の結果により一般性をもたせるには、対象とする形容詞の範囲を広げる必要がある。引き続き検討する。 用例調査の過程で、形容詞一語のみの発話(いわゆる「形容詞一語文」)の例も収集された。一般的に、中国語では一語文は成立しにくいとされるが、そのなかで形容詞を単独で発することの談話上での意味について、それぞれの形容詞の語彙的意味、および、本年度に得られた無標形容詞述語に関する知見を踏まえて、語用論的な観点から考察を行なった。2023年度内に論文の形にまとめることができなかったが、一語文の研究に取り組んでいる研究者との共著の形で、次年度に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、比較や数量表現のもつ文法的機能と程度性発現とのかかわりについて考察するものであるが、このことは無標の形容詞述語との比較なしには論じることができない。中国語の無標の性質形容詞はそれ自体が対比・比較の意味をもつという従来からの指摘に鑑み、2023年度は無標の性質形容詞が述語になる例について考察し、談話における機能の解明に注力したため、程度表現や比較表現そのものに着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究において、談話上の機能という観点から無標形容詞述語の考察を行ない、談話において程度性の表明が不要となる場合について知見を得られたため、これを踏まえて、最終年度にあたる2024年度には、初年度に予定していた程度表現と比較の関連性の分析に着手し、程度副詞や程度補語などの有標形式の程度表現が用いられる動機づけについても、談話レベルでの考察を行なう。最終的には、程度性発現のメカニズムという枠組みのなかに、無標形容詞述語や比較と数量表現の役割を位置付けることを試みる。
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