研究課題
若手研究
人は言語を理解する際、その内容を視覚的イメージとして心内に思い描く(メンタルシミュレーション)。本研究は、メンタルシミュレーションにおいて取得されやすい視点が、個人の発達段階や背景とする文化、母語とする言語によって異なるという仮説を実験的に検証するものである。研究代表者が行った先行研究では、成人日本語母語話者は、言語によって描写される事象を客観的視点から思い描きやすいことが示されている。本研究では、早期の発達段階にある話者や、文化的背景・母語が日本(語)と異なる話者に同様の客観的視点の選好がみられるかを検討することにより、メンタルシミュレーションの基盤となる認知特性の存在と性質を明らかにする。
私たちは言語を理解する際、文や単語の意味内容をあたかも現実のものであるかのように心内で思い浮かべ、擬似経験している(メンタルシミュレーション)と考えられている。本研究では、言語理解中のメンタルシミュレーションにおいてどのような視点が取得されやすいかが、自己主体感・認知的共感性といった心的特性の個人差によって異なることを明らかにした。さらに、おおよそ小学校低学年の年齢帯にあたる児童の視点取得の様式は、成人のものとは異なっていることも明らかになった。今後はこの知見を発展させ、言語理解中のメンタルシミュレーションの発達過程の全体像を明らかにしたい。
本研究においてとりわけ意義の大きかった成果としては、言語理解中のメンタルシミュレーションにおける視点取得の選好性が、発達段階によって異なっていることを明らかにできたことを挙げたい。この成果から、視点取得の様式は言語理解能力の発達と関連して変化している可能性を指摘することができ、今後本成果を発展させ言語理解に際するメンタルシミュレーションの発達変化の全体像を明らかにできれば、これまでにない新たなアプローチによる言語発達支援方法の開発につなげることができると考えている。
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