研究課題/領域番号 |
21K13003
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
中谷 博美 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20813421)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 文末表現 / 認知類型論 / 主観性 / 応用言語学 / 認知言語学 / 語用論 / 対照言語学 |
研究開始時の研究の概要 |
談話において、話し手は聞き手と認識をすり合わせるための表現を文末で用いる。英語では短い疑問形を付加する付加疑問形式、日本語では文末詞を加える形式がしばしば用いられている。興味深いことに、中国語はこの二形式、さらには両方を併せ持った形式が観察される。韓国語は日本語と同様の形式が中心であるものの、英語に近い例も見受けられる。 本研究では、この中韓語の多様な形式について、実際の使用例を調査し、英日語の二形式と比較対照して意味機能的特徴づけを与える。この結果に基づいて個々の形式を類型的に位置づけ、四言語の文末表現の全体像を示すことを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、中韓語の文末表現が持つ英日語の両形式との重なりと主観性の揺れに着目し、中韓語の文末形式を意味機能と類型的位置づけを示すことを目的としている。中韓語との比較対象を行うことにより、日英語を中心とする主観性による類型の詳述化を試みるものである。 研究3年目となる2023年度は、昨年度に引き続き映画から抜粋した英語の付加疑問文について、その日本語、中国語、韓国語訳の吹き替え版により作成したパラレルコーパスの精度を高めることができた。特に、韓国語訳について、ネイティブの協力を得て、分析の土台を固めることに成功した。オリジナル版の英語音声データとの比較に関しては、中国語の分類と英語音声データの関連性に加えて日本語および韓国語とも比較分析を進めている。 研究成果として発表した内容は、次のとおりである。英語の付加疑問文の3カ国語の翻訳を形式分類(①:文末詞付加、②:疑問付加、③:①と②の折衷型)した結果、中国語では①20%、②10%、③65%、日本語では①76%、②と③はなし、韓国語では①85%、②なし、③15%という結果が得られた。また、英語音声データとの関連性については、中国語が①と上昇調、③と下降調との関連性が認められること、日本語がいずれの形式分類にも属さないゼロ形式(何も付加されない例)が多数観察され、そのゼロ形式が上昇調との関連性が認められることが結果として得られた。韓国語については、①が日本語よりも多く、文末詞の種類によるさらなる分析を必要とすると考えられる。3か国語の翻訳の形式と英語音声の分析の結果を考察し、発話者が話し手および聞き手のどちらに意識が向いているのかという点が3か国語それぞれの翻訳形式に大きく影響を与えていると結論付けた。 これらの結果をもとに、新たに意味機能の考察をまとめたものを2024年度の学会発表につなげる予定にしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の状況改善により、韓国語ネイティブの協力を得て、韓国語に関する分析を進めることができているが、4か国語の文末表現と主観性による類型とのかかわりについての考察には至っておらず、全体としてはやや遅れていると判断した。 現在は、英語オリジナルの映画からの付加疑問文およびその3か国語翻訳をパラレルコーパスとして活用できる状態になっている。このパラレルコーパスに英語音声データを整理して加えることができているため、データをもとに意味機能の考察を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も国際学会発表の機会を十分に活用して議論を重ね、研究を進めて行く計画である。 パラレルコーパスに英語音声データを加えたオリジナルのデータを活用し、4言語の形式と意味機能のかかわりについて分析を進める。今年度は、特にそれぞれの言語について詳細な分析を行う予定である。データ分析に基づいた理論的予測について、インフォーマントによる検証を行う。さらに母語話者へのアンケートをオンラインで行うことにより、妥当性の検証を重ねる。また、昨年度の英語教育への応用についても研究を進める。
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