研究課題/領域番号 |
21K13020
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
山口 響史 大阪大谷大学, 教育学部, 講師 (50823811)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 受益 / 受害 / テクダサル / テクル / テクレル / 近世後期 / 上方語 / 江戸語 / 授受動詞 / テモラウ / 卑罵語 |
研究開始時の研究の概要 |
現代日本語には、動作主を主語として受け手にとって望ましくない事態(受害)を表わす表現が存在する。具体的には、テクレルやテクルの一部の用法やヤガル、クサルである。これらの表現は、古代語にはみられず、現代語に至るまでに発達したとみられる。 そこで本研究では、上記の形式が受害表現化する過程・理由を解明し、日本語の受害(対となる受益)表現群がどのような指向のもとに形成されたのかについて把握することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度の成果は主に次の点である。 1、中古~中世におけるクダサルの様相解明 中古~中世におけるクダサルの様相を調査した。当期は未だクダサルが「クダス+ル」とも分析できる時代である。先行研究では、クダサルがいかにして「クダス+ル」から「クダサル」へと移行したのかを記述しているが、その過程について具体的な数量的推移は示されていなかった。本研究の調査では、中古のクダサルにおいて対象物が「仰せ」類に偏っていくこととそれに付随してクダスへのルの付加が多くなっていくことをみた。 2、近世前期~後期におけるテクダサルの様相記述 近世期におけるテクダサルの様相を記述した。先行研究では、テクダサルの出現する中世末期頃の記述はみられるものの、近世前期以降の様相の記述は不足していた。そこで、本研究では、近世前期頃の近松浄瑠璃を中心的な資料としてテクダサルの様相の記述を進めた。この調査を行っている際に、近世期には、テクダサルに様々な敬語が付加されること、他の類似の形式としてテタモ、テタブのような形式が依然として使用されていること、テクレルの敬語形も使用があることがわかった。これらをふまえ、テクダサルの語史を記述するには、テクレルの敬語形に相当する形式を網羅的に記述することで、体系的な変化が把握できるのではないかという見通しを得た。とりわけ、テタモは近世前期において目下の者への敬意をこめた行為指示を表すことが多いが、近世後期になると使用数が激減する。このことが意味することを考慮しつつ、テクレルの敬語形の推移を記述する予定である。また、今後の調査については近世後期の東西差を視野に入れつつ進める予定である。近世後期上方語資料の不足を補うため、大坂俄資料の翻刻にもあたった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の計画通り、当初の計画では、現段階でテクルの検討まで進んでいる予定であった。しかし、テクダサルの用例観察をしていると、他の形式を考慮することで記述すべきことが出てきた。また、近世後期上方語資料の調査範囲を広げることを決めたことでやや遅れが出ている。 以上の理由により、(3)やや遅れている。と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画上では、クサルの研究を進める予定であったが、優先度の高いテクダサル、テクルの歴史についてテクレルの歴史と対照させつつ記述を進める。 テクダサルについては、テタモやテクレルの敬語形も含めて記述を進める必要性が生じた。そこで、基本的には、上記の三形式を比較しつつ記述を進める。 テクルについては、先行研究で調査の不十分な近世後期~近代を中心に東西差を考慮しつつ記述を進める予定である。
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