研究課題/領域番号 |
21K13024
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2023) 三重大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
田中 秀治 名古屋大学, 言語教育センター, 講師 (90779381)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 生成文法 / 統語論 / 併合 / 投射 / 移動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人間の言語産出能力の中核とされる「併合」という操作の在り方を追究する。伝統的な研究では、併合という操作が、[1] 語や句などの二つの要素を一つの集合として結合する機能と、[2] 片方の要素の特性をその集合に投射する機能を持つと提案されてきた。しかし、近年 [2] の投射機能は余剰的と主張する研究が着目され始め、その排除を目指す極小主義アプローチが展開されてきている。本研究では、このアプローチが克服すべき問題として「投射という概念なしでどうやって移動現象を正確に捉えるのか」という問題を論じながら、併合操作の新しい理論を構築していく。
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研究実績の概要 |
2023年度は、2022年度までと同様に「併合操作には出力構造にラベルを付与するような投射機能はない」と仮定しながら、2種類の研究を行った。1つ目は、本課題の最大の問いである「移動の問題」についてで、前年度に明確化した「移動に対する句性効果(phrasality effect)と優位性効果(superiority effect)を統一的に捉えるためにはどうすれば良いか」という問題を引き続き扱った。特に、前年度にその解決案をまとめた論文を国際ジャーナルに投稿したが、その査読結果が今年度に返ってきて、査読者から「提案された理論は主語移動などの『A移動』のみを説明対象にしており、その提案がwh移動などの『A'移動』にも適用できるかを検討する必要がある」と指摘されたため、今年度はその提案修正の検討を行った。 2つ目の研究は「伝統的にラベルありの統語論を仮定しながら分析されてきた構文」に着目し、「そのような構文はラベルなしの統語論ではどのように分析できるか」という問題に取り組んだ。これは1つ目の研究の拡張と言えるもので、主に2つの構文分析を行った。1つは「日本語の語彙的複合動詞」についてで、その統語構造をラベルなしの統語論でも説明できるような形で再考し、その意味計算の方法も盛り込んだ論考を2024年10月発刊予定の書籍に寄稿した(2024年3月19日)。もう1つは「英語の二重目的語構文」の見直しで、その特性をラベルなしの統語論で捉えるための基礎分析を行い、先行研究の問題点をまとめた論考を『名古屋大学言語教育論集』創刊号の中で公表した(2024年3月31日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
区分の理由は、2022年度に国際ジャーナルに投稿した論文が2023年度中に採択されなかったものの、現在も査読プロセスの段階にあり、またその提案内容の修正方針も検討できていると評価できるからである。また、研究の射程を本課題の最大の目的である「ラベルなしの統語論の構築」に留めず、「これまでラベルありの統語論の中で分析されてきた構文の再考」に拡張させているという点でも、進捗状況はおおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、国際ジャーナルに投稿した論文の修正を完了させ、その論文が年度中に採択されることを目指す。また、前年度に引き続き、本研究の提案する視点から様々な構文の再分析を行っていく。
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