研究課題/領域番号 |
21K13091
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小林 理恵 東京大学, 史料編纂所, 特別研究員 (20791817)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | 服忌令 / 触穢 |
研究開始時の研究の概要 |
触穢(ケガレ)の観念は、平安期の公家社会で制度としての確立を見たが、それはその後の中近世における触穢とどのような連続性或は非連続性を持つのか。本研究はその連接点として、平安期末以降、神社毎に独自の触穢規定が設けられるようになる動きに着目し、それらの触穢規定(諸社服忌令)の成立過程を考えることで、古代から中近世社会へと至る触穢観念の長期的展開を再考するものである。
|
研究実績の概要 |
諸社服忌令の成立について考えるための検討として、(1)平安期の古記録から一部の神社にのみ特有な触穢に関する制度・慣例についての情報収集作業及び、月1回程度、近世史の研究者と共に、近世における触穢制度の運用などを検討する勉強会を2021年度より継続して行うと共に、新たに(2)現在未翻刻の諸社服忌令の現物調査を実施した。 このうち(2)については、複数の諸社服忌令を参照することが出来、現存する諸社服忌令の把握という点では一定の成果があがったと見込まれる。しかしながら、おそらくは中世末~近世期の成立と見られるもののも多く、かつその前後関係は未だ検討中であるが、異なる神社の服忌令がほぼ同文であるケースも確認され、他の神社の服忌令の引き写しであると推測されるものもあった。したがって平安期末における諸社服忌令そのものの成立過程を明らかにするにあたっては少なからぬ課題を残している現状である。 一方で既に刊本として出版のなされている、石清水社や春日社の資料などによっては、平安期において一部神社に特有な触穢をめぐる慣例や禁忌の存在が窺えるところであり、特に奉祭時やその前段階の斎戒時における仏事の位置づけをめぐって活発な議論がなされていることが確認された。魚食禁忌についての論文で多少言及した通り、神社毎の禁忌の差異を生み出す1つの要因が、各神社における神仏習合の程度の差であったことが想定されるが、触穢についての神社独自の判断がなされるようになる背景ついては、異なる角度からの検討が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在未翻刻の諸社服忌令の調査を行ったところ、前述の通り、現存するものについてはその成立がかなり時期的に降ることが判明したのに加え、当初の見込みに反して、その成立以前に遡る記録の引用が総じて少なかったため、諸社服忌令成立期と目される平安期末頃の状況を考えるにあたっては課題が残る結果となった。また神社毎の触穢や禁忌についての慣例が窺えると期待された、貴族層の神社参詣の記録においても、それらに関する記述が想定ほどは確認されていない。 以上のことから、当初の研究目的の達成がなされているとは言い難く具体的な研究方法の軌道修正が必要であること、また現時点までの成果を踏まえた論文の成稿が予定よりも遅れていることから、全体として「遅れている」との評価を行うところである。
|
今後の研究の推進方策 |
現存する諸社服忌令そのものや、貴族層の神社参詣の記録から判明する点を踏まえるのみでは、諸社服忌令成立の背景を明らかにする上では甚だ不十分であることが認識された。したがって、今後は、石清水社や春日社などの神社に残された記録をより詳細に検討し、触穢発生時の対応事例などを分析していくことで、触穢についての独自の慣例が各神社で成立していく過程を明らかにし得るのではないかと考えるため、そのような方向性での検討を推し進める。一方で、現存する諸社服忌令の調査を行ったことには、一定の意義があったとも評価されるため、本研究課題以後の研究も念頭に置いた、それらの取りまとめも併せて実施する。
|