研究課題/領域番号 |
21K13114
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 金沢大学 (2023) 上智大学 (2022) 東京大学 (2021) |
研究代表者 |
前野 清太朗 金沢大学, 人間社会研究域附属グローバル文化・社会研究センター, 特任助教 (70844819)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 地域社会 / 台湾 / 旧慣・慣習法 / 植民地統治 / 台湾総督府 / 水利 / 親族集団 / 植民地社会史 / 地域エリート / 植民地台湾 / 農村リーダー / 社会史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では植民地台湾の水利をめぐる制度史的研究と、対比的な2事例の地域史的分析を組み合わせて行う。研究資料としては日本統治期の公文書群に残る水利関係の旧慣調査書等を中心に用い、一部清朝統治期の資料を用いる。資料からまず清朝から統治を引き継いだ日本の植民地当局が各地の水利慣行を「旧慣」として統合していったプロセスの制度史的分析を行う。ついで2事例地域を対象に1870年代から1910年代にかけての水利施設管理の形態の変遷とそれに関与した人員の変動を分析して比較する。分析をふまえ「植民以前」の台湾のローカルな社会関係が「植民以後」の体制下へいかに受け継がれ、ないし変容・再編を経験したかを検証する。
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研究実績の概要 |
本課題では、植民地移行期の台湾(1870年代~1910年代)における地域水利管理制度の変容について、制度史的分析と地域事例研究の両面から明らかにすることをめざして研究を実施してきた。課題初年度より継続してきたCOVID-19の世界的流行は相対的に安定し、出入国制限の制度的な緩和のみならず対面的交流の受け入れに関する社会的な許容度も高まってきたことから、本年度(2023年度)からは本格的に現地資料調査・フィールド調査を再開することができた。 文献資料を利用した制度史的分析に関しては、オンラインアーカイブを利用した『台湾総督府文書』および『鶯歌庄文書』中の資料分析を継続中である。今年度は『鶯歌庄文書』中の「區長會議録」に着目しつつ、関連する『台湾総督府文書』中の街庄関連文書の読み込みを進めた。地域事例研究の面においては、これまでフィールド調査を主にした分析を行ってきたが、一部新たな文献資料にも接触することができた。中央研究院台湾史研究所では、台湾各地の家族文書を収集・整理してきたが、本年度の現地資料調査では、現地機関でのみ利用可能であった文書を実際に閲覧することができた。とくにこれまで調査を行ってきた新北市~桃園市の境界区域に関連する家族文書を閲覧するとともに、当該文書を補完してきた家族成員にも接触することができた。フィールド調査の面においても、前年度に予備調査を行ってきた新北市鶯歌区において異なる地域的宗教儀礼への参与観察を行うとともに、現在の団体関連資料の提供を受けた。 以上の2023年度の研究成果の一部は、過去の研究の成果と合わせた分析として関連する研究会において口頭で報告を行った。また過去の年度に実施してきた文献的研究の成果を、著書『「現代村落」のエスノグラフィ―台湾における「つながり」と村落の再構成―』の一部に組み込み公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19流行に伴う出入国制限は2023年度に入り大きく緩和され、対面的交流の受け入れに関する社会的な許容度も高まってきたことから、本年度(2023年度)からは本格的に現地資料調査・フィールド調査を再開した。 今年度前半においては、新たに『鶯歌庄文書』中の「區長會議録」に着目しつつ、関連する『台湾総督府文書』中の街庄関連文書の読み込みを進めた。これらの文書は、地域的な水利に関する制度の整備に先行あるいは並行して社会管理の末端の単位として「街庄」が整理されていったことを示しており、『台湾総督府文書』中の「水利ニ關スル取調方各縣各廳ヘ照會ノ件」等に示された初期の地域水利管理制度の整備が植民地社会を管理可能な形に整理していこうとする一連の政策のなかにあるものであったことが示唆された。 今年度の現地資料調査・フィールド調査は2023年9月および2024年2月の2回にわたって行われた。9月の調査においては、主要な地域事例の分析対象として着目している新北市~桃園市境界区域における研究を蓄積してきた台北大学海山学研究センターの研究者と研究交流を開始した。同センター所属の研究者の協力のもと、2月の調査では現地の郷土史家等と関係を作ることに成功した。現地での新たな関係構築の成果をふまえつつ、9月・2月それぞれに前年度に予備調査を行ってきた新北市鶯歌区において異なる地域的宗教儀礼への参与観察を行うとともに、現在の団体関連資料の提供を受けた。 また研究を進めるなかで、新たにこれまで着目していなかったアーカイブ資料が地域事例分析にあたって関連資料として利用可能であることが判明した。その一つが中央研究院台湾史研究所の収集する家族文書であり、2月の調査時に現地機関でのみ利用可能であった文書を実際に閲覧することができたとともに、当該文書を保管してきた家族成員にも接触することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度より本格的な現地資料調査・フィールド調査の実施が可能となったことで、本課題が当初想定していた複数地域の事例比較への道がようやく開けてきた。ただし本課題の残る実施年度が限られていること、現在の所属機関での勤務形態などと引き合わせて、実際にインテンシブなフィールド調査を行う対象地域は過去に調査を行ってきた南部の調査地と、現在取り組んでいる北部の調査地の2地域比較に限定してゆかざるをえないように判断する。 資料面では『台湾総督府文書』中の「水利ニ關スル取調方各縣各廳ヘ照會ノ件」附属の各地の報告資料の量がかなり多く、異なる地理条件のいくつかの地域をエクステンシブに俯瞰・整理することをまずはめざしたい。そして研究成果公開の面においては「水利ニ關スル取調方各縣各廳ヘ照會ノ件」を利用した論文作成をこれまで通り目指しつつ、北部の調査地において得られたフィールド調査の知見を部分的に論文化して早期に公開することを想定していく。
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