研究課題/領域番号 |
21K13128
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 法政大学 (2023) 東京大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
内田 康太 法政大学, 文学部, 講師 (80879693)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 立法 / 元老院決議 / 勅法 / アウグストゥス / 皇帝 / ケントゥリア民会 / カエサル / 第二回三頭政治 / 民会 / 元老院 / 支配 / 政体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「共和政ローマはいかにして帝政へと移行したか」という古代ローマ史研究上最も大きな未解決問題の一つに答える試みである。 伝統的に、共和政末期までに元老院による市民団の支配が脆弱化したことが、皇帝による支配の礎を築いたと説明されてきたのに対し、近年では、政体の転換期に至るまで元老院による安定的な支配が持続したことがしばしば論じられている。 そのなかで、本研究は、カエサルによるルビコン渡河からアウグストゥスの治世までの時期における立法の過程を精緻に分析することで、皇帝は、元老院による旧来の支配を媒介に、その代理人として市民団の支配を確立したという解答を上記の問題に付する。
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研究実績の概要 |
本研究の出発点は、古代ローマにおける立法が、元老院による承認(黙認)と民会における投票という伝統的な形式を共和政末期に至るまで維持していたという知見に求められる。この知見をめぐる研究の成果は大半が未公表の状態にあったものの、本年度遂行した研究の一環として、単著のかたちで出版されるに及んだ。 研究の主眼となる立法の個別事例分析についても、研究計画に沿って進められた。本年度は、アウグストゥス時代に制定された諸法を対象とし、民会での立法に関して、共和政の伝統に則った立法過程が保たれていたことを確認した。一方、帝政期に入ると元老院による法の制定も顕著に見出されるようになる。参照するべき資料は増加し、史料形態としても文献史料のみならず碑文史料の分析が必要となったため、英国ロンドンに所在するInstitute of Classical Studiesにて在外研究を行った。膨大な関連資料を利用することで、帝政初期に属する元老院決議の一部について、その成立過程を考察するための材料を得ることができた。 元老院決議の法源化をめぐっては、先行諸研究の多くが皇帝権の確立をその前提として想定している。皇帝の命令が法的拘束力をもつがゆえに、その承認を得た元老院決議も法的拘束力をもつ存在となったという理解である。しかしながら本研究は、共和政末期から帝政初期に至る民会立法の手続きを根拠に、民意の代弁者として認知された元老院による法制定が先行し、元老院の意思の代弁者となった皇帝がこれを継承したものと推測する。この点において、『学説彙纂』に採録された法学者ポンポニウスの説明付け(Dig. 1.2.2.9)が、一面的には本研究と立場を同じくしており、再検討の余地を有すると考えられる。本年度の在外研究では、この問題に関連する文献の収集と部分的な分析も進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は、昨年度積み残されていた第二回三頭政治期に属する諸法の分析から始まり、研究計画に予定されていたアウグストゥス時代までを対象とすることができた。さらに、研究の遂行に際しては、新型コロナウイルス感染症の流行により過去2カ年に渡って延期されていた国外での資料調査を実施し、これまでの研究により得られた成果の検証と確認に加えて、今後の研究に必要となる史料や関連文献の収集も進められた。また、本研究の基礎をなす知見が出版・公表されたことも、【研究実績の概要】に記載したとおりである。従って、「おおむね順調に進展している」といえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、アウグストゥス時代の元老院決議を網羅的に分析することで、民会を中心とした共和政期の立法から、帝政期に元老院決議や皇帝の命令が法源化していく経緯を考察する予定である。研究の遂行には、数多くの多様な資料を参照することが求められるため、在外研究の利用は不可欠である。また同時に、これまでの研究により得られた成果を国内外の専門研究者のみならず、他の学問領域に属する研究者、あるいは、広く一般に向けて発信することで、本研究を一層精密なものとする。拙著に寄せられる批判に対応することもその一環となる。
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