研究課題/領域番号 |
21K13133
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
梶原 洋一 京都産業大学, 文化学部, 准教授 (50844552)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 大学 / 中世ヨーロッパ / 学位 / 托鉢修道会 / ドミニコ会 / フランシスコ会 / シトー会 |
研究開始時の研究の概要 |
大学制度は、13世紀ヨーロッパにおいて神学や法学の教師と学生たちが結成した同職組合に由来する。学位は元来、この組合で教えるための教授資格を意味したが、大学で学ばれる高度な知識は社会の他の部門でも有用とされ、学位は社会的ステータスとしての重要性を増す。本研究は、こうした変化の中、大学の重要な構成要素でもあったドミニコ会、フランシスコ会、シトー会といった修道会において、大学学位がどのような位置付けを与えられたかを体系的に考察する。
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研究実績の概要 |
まず特筆すべき業績は、2022年11月に以下のフランス語研究書を出版したことである。 Yoichi Kajiwara, Du frere au maitre. Les Dominicains de France face au syseme universitaire des grades au Moyen Age, Cerf, Paris, 2022.(書籍名中のフランス語アクセント記号は、本書式では使用できないため省略している) 本書は、フランスの伝統ある出版社Cerf社から刊行されたものであり、表題を訳せば、「修道士からマギステル(博士)に。中世におけるフランスのドミニコ会士と大学学位制度」となろう。学問活動で名を馳せたドミニコ会が、大学(托鉢修道会と同時期、13世紀前半に制度として確立した)の神学部が発行する学位をどのように捉えていたか、という問いのもと、修道会の規則と実践のせめぎ合い、理念と学位の関係を、ドミニコ会の法制・行政文書、ドミニコ会士たちの思想的・神学的著作や歴史叙述などを素材に、実証的に描こうと努めた。 また、次の研究報告を実施した。 「歴史と社会をつなぐメディア:学習マンガとPodcast」2022年度第8回高大連携歴史教育研究会大会「歴史教育で高校・大学・地域をつなぐ」、2022年7月31日、同志社大学 これは自らの専門研究と、より広い社会との関わり、すなわち研究成果の社会的還元のさらなる可能性を探ったものであり、大学の研究者だけでなく高校の教員など多様な聴衆と議論を交わす機会を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のフランス語書籍のような、大学学位の関係と托鉢修道会の関係に関する総合的研究は欧米学会にも例がなく、国際的に見ても画期的な成果である。同時に、最も有力な托鉢修道会であるドミニコ会における大学学位の位置付けについて包括的な考察を提出したことにより、本研究全体にとっても大きな一里塚となる業績と言える。またこれと並行して、ドミニコ会との比較対象として設定していたフランシスコ会についても本格的な研究作業に着手した。さしあたりは法制史料の収集を進めながら、最初の課題として、修道会と学問の関係にとっても中心的な問題の一つと言える、書物の位置付けについて論文を執筆した。これは次年度中に刊行される予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きフランシスコ会と大学学位の関係について、史料収集を進めつつ研究を深化させる。さしあたり取り組むべき課題は、修道会における学位取得管理制度の発達過程をあとづけること、また修道会の理念にとっての大学学位の意義がどのように変遷したかを辿ることである。フランシスコ会は創立以来、ドミニコ会以上に清貧理想を前面に掲げた修道会であって、それゆえ多くの経済的負担(及び世俗的成功の可能性)を伴う大学学位の追求については、ドミニコ会の場合にもまして強い葛藤が存在したと予想される。こうした仮説を修道会会憲など、実際的であると同時に理念的でもある文書をもとに検証することが喫緊の課題である。ただし、フランシスコ会の場合、こうした史料がドミニコ会ほどには体系的な校訂・刊行の対象とはなってこなかったという事情があり、史料収集そのもの、また各史料の性格の把握にも注力する必要があろう。
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