研究課題/領域番号 |
21K13136
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
RYAN JOSEPH 岡山大学, 文明動態学研究所, 特任准教授 (40878469)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 鉄製武器 / 金属製武器 / 弥生時代 / 古墳時代 / 生産体制 / 流通方式 / 国家形成 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、糸巻きを中心に武器装具をデジタルマイクロスコープなどの光学科学機器で詳細に検討することにより、複数の製作集団を抽出し、武器の複雑な生産と流通の実態を解明することである。古墳時代の金属製武器は、ヤマト政権によって一元的に各地の首長へ配布されたと考えられ、これを前提にヤマト政権による地域支配のあり方が問われてきたが、近年、地域において在地生産された武器の存在が明らかとなった。装具の詳細な分析から、武器の生産と流通の実態を解明することにより、ヤマト政権を中心とした集団間関係や地域支配方式を明らかにする。さらに世界各地の事例との比較を通じて、日本列島の初期国家形成過程の特質を解明する。
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研究実績の概要 |
二年目である2022年度は、弥生時代から古墳時代前期における鉄製武器の製作集団を抽出し、その生産と流通の実態を解明する上で必要な分析データを収集するため、刀剣類やヤリ、鉄鏃、農工漁具の糸巻きを対象にデジタルマイクロスコープによる観察を実施した。2021~2022年度を通じて200本以上のヤリを観察し、体系的な研究の土台を構築しつつある。 まず、前年度に引き続き、弥生時代終末期から古墳時代前期のヤリや鉄鏃に巻かれている糸の素材、撚りの有無・回転方向、幅を観察・計測し、武器の型式ごと、そして古墳ごとの様子を確認した。その結果、①ヤリなど同一種類の器物での糸巻きの様子からみた生産体制の集約度合い、②ヤリと鏃(または農工漁具などの生産用具)といった異なる種類の器物を横断して、糸巻きの様子からみた器物生産諸部門の関連性という2つの課題について検討を深めることができた。 また、弥生時代中期の糸巻きを施されている鉄剣もほぼ全て観察し検討を進めた。統一性が非常に高い属性と低い属性の両者が確認でき、その生産体制とそれからみた社会政治的仕組みについて考察を深化させた。 さらに、木製把の内部構造や把と鉄本体との構造的な関係を詳細に検討するため、岡山県浦間茶臼山古墳や岡山県宮山古墳などから出土したヤリや鉄剣、鉄鏃のX線CT調査を実施した。とくに最古型式のヤリ(糸巻底辺型)について今まで注目されてこなかった把の製作技術について新知見を得ることができた。 このように、武器の生産から副葬に至る過程をより実証的に復元できる手掛かりを得ており、また材料としての糸の流通についても見通しを立てることができた。そのほか、SfM-MVSを用いた有機物の三次元モデルを構築し、伝統的考古学で用いる手書き実測図では十分表現できない多様な有機物の資料提示法の開拓に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は数多くの実物資料を分析し、本研究課題を大きく進展させることができた。弥生時代中期の糸巻き鉄剣のほぼ全点、古墳出現期の最古型式のヤリのほぼ全点、そして多量副葬で著名なメスリ山古墳の約200本のヤリのほぼ全点を観察し、実証的かつ体系的な研究の材料を順調に蓄積している。 また、X線CT調査などを通じて、木製装具の構造や鉄本体と有機物との関係など従来の研究では不明瞭な課題についても新知見を得ることができた。さらに研究成果を踏まえ2本の論文投稿を準備している。2023年度の総括的研究を実施するための基礎的成果を得ていると評価できよう。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の進捗状況を踏まえ、2023年度は論文執筆および遺物報告を行いながら、デジタルマイクロスコープを用いた実物調査を継続し、弥生時代~古墳時代前期における武器の生産・流通体制とその変化を明らかにし、ヤマト政権の政治的戦略を考察する。とくに下記の二つの課題を中心に作業を継続する。すなわち、①ヤリなど同一種類の器物での糸巻きの様子からみた生産体制の集約度合い、②ヤリと鏃(または農工漁具などの生産用具)といった異なる種類の器物を横断した糸巻きの様子からみた器物生産諸部門の関連性、である。 最古型式のヤリについてはおおむね理解を固めることができたので、後続型式の検討をさらに深め、通史的な変遷を明らかにすることとする。 こうした作業を通して得た生産と流通の実態をめぐる体系的な理解を踏まえ、研究の総合化を図り、日本列島の初期国家形成過程における集団間関係とヤマト政権による地域支配の特質を考察する。そして以上の成果を活用し、文献調査を踏まえ、世界他地域の同様な事例と比較することにより、武器を含む貴重財の生産・配布と政治権力との関係を探る。こうした比較研究を通じて、日本列島の初期国家形成期における武器の生産と流通の特質、ひいてはヤマト政権による地域支配のあり方の相対化を図り、人類史への位置付けを行う。 上述の成果は学術雑誌に投稿し、積極的に国内外への発信を予定している。
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