研究課題
若手研究
考古遺物の一つである糞石に含まれる寄生虫卵や幼虫は、当時の健康状態や衛生環境を推定する指標となりうる。本研究は、日本列島の糞石DNAに含まれる寄生虫を復元し、当時の生活環境や古代人の健康に与えた影響の解明を目的に、短いDNA断片の配列解析に適した次世代シーケンサー(NGS)による糞石DNA配列解析を行う。配列情報から、種の同定や古代と現代の寄生虫の系統関係、病態に影響を与える遺伝子の差異を考察する。東アジアにおける糞石DNA感染症研究は例がなく、本応募研究はこの地域での生活環境の解明や感染症の広がりを明らかにする一助となる。
近年、古い遺物からDNAを抽出して配列解析を行う古代DNA研究分野において、過去の感染症の実態を明らかにする研究が進みつつある。過去の病原体DNAを直接分析することで、その拡散過程や病原性の変化を議論できるようになってきた。研究対象となる疾患はペストや結核など広く知られた感染症が対象になることが多いが、寄生虫もヒトに身近な感染症である。そこで、糞石由来DNAを用いた寄生虫の進化解析に向けて分析対象とする寄生虫DNAの実験的濃縮を実施することにした。まずは、寄生虫の存在の有無を確認するため、ショットガンシーケンシングでの予備解析で得られたDNA配列について、種分類の精度の向上を試みた。これまでは解析プログラムCentrifugeを使用して配列の種分類をしていたが、偽陽性判定が多い可能性が見られたため、類似のツールであるKraken2を用いた分類を行い、より確からしい分類を行うためのパラメータを検討した。その結果、Centrifugeより検出できた種は減少したが、その一覧を見ると以前の分析よりも尤もらしい結果が得られた。また、古代ゲノムでの種分類に利用されることが多いMALTでの解析も進めている。こちらのプログラムはKraken2よりも解析に時間を要するが、より偽陽性や偽陰性を減らすことができると考えており、引き続きパラメータの検討を続ける。また、海外でのサンプル収集を目的としてインドネシアへの渡航を検討していたが、インドネシアでの調査申請の調整に想定以上時間を要しており、渡航費やそれに必要な備品に必要な経費を次年度に持ち越した。
2: おおむね順調に進展している
寄生虫DNA濃縮の実験設計に向けて、予備解析データの解析が進んでいる。インドネシアとの調整も少しずつ進んでおり、次年度中に渡航できる見込みである。
引き続き、寄生虫DNA濃縮の実験とそのデータ解析、及びサンプル収集を進める。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
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