研究課題/領域番号 |
21K13142
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
李 ガン 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (00807547)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 装こう文化財 / 掛軸 / 画像相関法 / 非破壊分析 / 湿度循環 / 歪み / 応力 / 掛軸日本画 / 劣化予測 / ひずみ分布 / 超分光イメージング法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、掛軸日本画などの装こう文化財に起きる劣化の科学的な診断手法を確立することを目的とする。そのために画像相関法や超分光イメージング法のような非破壊画像診断手法を用いて変色や物理的変形の状態とその挙動を目に見えないレベルで細かく分類し、定量的に評価する。それにより掛軸の不可逆的な損傷の拡大を抑制し、精密な処置に対応できる予防的保存技術を確立する。
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研究実績の概要 |
掛軸では本紙の上に滲み止めである礬砂溶液を引き、絵具を使って彩色を表現する。そして、本紙を支えるためにその裏面に小麦澱粉から調製した糊を用いて3~4種類の裏打ち紙を順次貼るが、直接接着しているという点では肌裏紙の存在が本紙の保存性向上に影響を与える。しかし、構成材料の劣化、利用頻度、保管環境の変動によっては経年劣化の過程で本紙に物理的な力が不均一に加わり、物理化学的な劣化が進む。その結果、皺や折れなどの変形が生じ、絵具を剥落させ、変色も起きるため、鑑賞や保管に不具合が生じ、寿命も短くなる。 本研究では、掛軸の本紙における物理的変形について面内の歪み分布に着目し、紙表面にある特徴的パターンが変形後にどれだけ動いたかを画像相関法を用いて変位を細かく計測し、非破壊的、定量的に評価し、その変化挙動を予測することを目標とする。 今年度は、相対湿度の循環(20~80%RH)を繰り返す環境の中で、経年劣化した掛軸日本画とそのモデル試料に発生する歪みの位置とその後の形状変化を画像相関法により評価し、製作に使用される材料や技術による寸法安定性の違いを検討した。試料に存在していた応力の程度は面内の位置によって異なるため、湿度循環による面内変形のパターンも変わっていった。しかし、裏打ちにより本紙の形状変形が緩和され、材料の濃度や裏打ち方法、及び劣化期間によるパターンの違いも検出できた。経年劣化した掛軸の場合、本紙と表装裂の接着面において強い形状変形が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
相対湿度の循環条件下で試料が動かない状態を維持したまま観察する手法を確立するために手間を取った。また、同じ種類の試料の湿度循環による変形パターンの再現性を確認する必要が生じたため、想定外の手間を取った。
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今後の研究の推進方策 |
掛軸日本画に対する非破壊的な診断手法の一端を確立するために掛軸の形状変形のみならず、変色現象の基となる化学変化の計測を含む総合的な評価を行う予定である。そのために、製造方法の異なる数種の和紙と顔料を塗布した試料を製作し、湿熱劣化と紫外線劣化をそれぞれ行い、超分光イメージング法による化学変化を定量的に分析する。測定がうまくいかない場合は、ポータブル式の短波長赤外線(SWIR)分光光度計により点分析を行い、非破壊的な評価を行う予定である。
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