研究課題/領域番号 |
21K13145
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分03060:文化財科学関連
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所 |
研究代表者 |
片渕 奈美香 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, アソシエイトフェロー (80882852)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 染織文化財 / 初期合成染料 / 耐光堅牢性 / 変退色 / 保存修復 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、近代染織品の染織文化財としての重要性の高まりに伴い、保存修復に関わる研究が求められている。こうした近代染織品に用いられている合成染料を含む新規素材には、光や湿潤などの様々な外的要因に対して非常に脆弱なものがあることは経験的に認識されているが、その詳細については明らかでない。 本研究では、今後さらにその重要性が増すと考えられる近代染織品の保存修復に資する知見を得ることを目的に、主要な初期合成染料を対象として、文化財の保存修復・展示に関わる外的要因の中でも、とくに重要であると考えられる光による染色堅牢性や変退色に関わる知見の蓄積を行う。
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研究実績の概要 |
3年目の本年度は、これまでに作成した変退色サンプル布を対象に、科学的調査を実施した。光による染色堅牢性評価では、分光測色計(CM-2600d、KONICA MINOLTA)により取得したL*a*b*値、これらから算出した色差(ΔE*ab)、分光反射率を用いた。その結果、塩基性染料サンプル布では、露光の早い段階から色調変化が顕著に見られ、酸性染料サンプル布よりも総じて変退色が大きいことを確認した。また露光に伴う分光反射率の変化では、酸性染料では、特徴的な変化が見られなかったが、塩基性染料では、未露光時に見られた360-460nm間のピークが露光により低下した。このように塩基性染料では、露光に伴い、一定の波長範囲において特徴的な変化が見られるため、さらに検討を行う必要がある。以上の結果をまとめて日本文化財科学会において発表した。変退色挙動の検討では、当初の計画では、変退色サンプル布からの抽出液について吸収スペクトルの測定を行うことを予定していたが、所属機関に既存の分析機器であり、非破壊・非接触で分析調査が行えるハイパースペクトルカメラおよびフーリエ変換型赤外分光光度計が使用できることになったため、計画を変更して、こちらの測定を先に行うことにした。露光により染色布に生じた化学的変化を調べるため、前述の装置を用いて、変退色サンプル布の測定を行った。現在、測定については完了し、取得データの解析・考察を行い、成果報告の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年目の本年度は、初期合成染料の変退色挙動の検討として当初計画していた実験手法ではなく、今後、文化財の分析調査への導入が進むと考えられる新たな実験装置を用いて、データ測定を行った。初めての測定や不慣れなデータ解析と考察に取り組むことになり、予定より時間を要したため、本区分を選択した。さらに1年間の研究期間延長を申請して、再現性の確認のための追加実験や成果報告を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、研究期間を1年延長し、作成した変退色サンプル布について、引き続きデータ解析を行うとともに、現在、取得データの整理・分析を行っている成果をまとめて、論文投稿や学会発表を行う予定である。さらに、変退色サンプル布についての変退色挙動に関わる基礎情報を得るために追加実験や測定を検討している。
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