研究課題/領域番号 |
21K13162
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 一般財団法人農政調査委員会 |
研究代表者 |
池田 和子 一般財団法人農政調査委員会, 調査研究部, 専門調査員 (40774443)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | かんきつ栽培 / 農業臨時労働力 / 愛媛県 / 担い手 / かんきつ産地 / 地域文化 / シグネチャーストーリー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、愛媛県八幡浜市真穴地区のミカン産地を事例に、収穫期の「アルバイター」を自宅に宿泊させるという特色に関する実証研究である。戦後から1990年ごろまでの自宅受入の実態と経験を調査研究し、自宅受入を可能にしている実質的な要因を明らかにする。同時に、自宅受入と地区の史実である大正時代の米国渡航の結びつきに着目し、渡航経験者が地区のミカン生産と産地形成に具体的にどのように関わっていたかと、その関わりを農家がどのように認識してきたかを調査分析する。研究結果をふまえ、産地の歴史に自宅受入を位置づけ直し、これからの産地持続の取組みに、自宅受入をめぐる地域文化を戦略的に活用する方法を検討する。
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研究実績の概要 |
2年目の計画は、前年の結果をもとに、聞き取り調査を開始することであった。 2022年8月に、JAの真穴事業所長およびアルバイター事業のキーパーソンのひとりである農家の方に会い、近年の制度の変更について話を聞くことができた。2018年7月の「西日本豪雨」とコロナ禍を経て、アルバイター事業の制度面での変化があった。具体的には他地区における事業の導入や募集プロセスの変更である。 またこのときに聞き取り調査の可能性について相談し、2022年シーズン収穫後に調査を実施させてもらうこととした。 年明け後の2023年3月に聞き取り調査を開始した。調査者の業務都合のため日程確保が難しく、かろうじて2日間の調査を実施した。聞き取り対象者の選定には、前年度に実施したアンケート調査の結果から候補者リストを作成し、JA真穴事業所に仲介をお願いした。またこの時はJAにしうわ本店の担当者に会い、制度の変更について話を聞く機会を得た。2戸の農家にて聞き取り調査を実施した。話者は2軒とも戸主の男性で、地区で中心的な役割を担っている。アルバイター事業を通じた雇用の状況と事業以前の雇い入れを聞き取る本来の調査目的だけでなく、アルバイターの滞在する場所や、より幅広く地区における出荷の仕組みなども含め、ミカン作りについて広範な情報を得ることができた。 2023年3月末、本研究の開始からこれまでの調査結果をまとめ、日本地理学会春季学術大会(東京都立大)にてポスター発表を行った。 今後は聞き取り調査を本格的に進めていく予定である。2022年度の調査で得た調査結果を手掛かりに、地区における雇入れの経験を蓄積していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れている点は、聞き取り調査の進捗である。夏季にコロナの感染者数が増えたこともあり、本来調査を実施する予定であった夏季に実施できなかったためである。聞き取り調査の開始段階であり、慎重に進める必要があった。前年の積み残しであった、現地の窓口となるJAにしうわのアルバイター事業担当の方へのあいさつや制度面での確認は実施できた。 感染予防をより重視するスタンスからこれを脱しようとする流れに変わりつつあり、調査者の日常業務において復旧と変化のための動きが同時に発生している。そのため、スケジュールの面で年度末の調査実施も非常に厳しく、タイトな中で実施せざるを得なかった。しかし、聞き取り調査に着手できたことは大きな意義があり、また本格的に調査を進めるにあたっての質問事項の確認・修正を行うことができた。 実際に調査を開始して感じた点は、調査員を頼む等により事務的・画一的に調査を処理していくことは、本研究の手法として適切ではないということである。過去の経緯にとどまらず現行のアルバイター事業についても、活用の仕方には農家ごとの違いがあることが示唆された。この違いは、各農家の人員数等による前提条件や仕事全体に対する力点の置き方、こだわりに基づいていると思われる。 これまでの調査をまとめ、年度末に学会発表を行った。質問紙調査の結果を公表できたことと、サンプル数が2件と少ないものの対照的かつ新たな知見が得られたため、一定の成果として報告することができた。今回はポスター発表とし、交流の機会を得やすくなるよう工夫した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、聞き取り調査を進めていく。調査数の遅れは懸念事項ではあるが、調査の精度を高め質を維持することをまず重視し、そのうえで量的にも増やせるよう努めたい。今後の調査見通しとして、量的には遅れを完全に取り戻すことは容易ではなく、分析とまとめを調査に並行させすことで対応するとみている。 聞き取り調査の話者には、学会発表の内容をフィードバックしている。成果報告をはじめとして研究意義を感じてもらい、地域の人が本研究に関心を持ち調査協力を引き出せるように努めたい。 2件の調査結果を踏まえ、文献調査の方も別途行い、聞き取り調査の際の補助資料として使用可能なものがあるか、探索したいと考えている。
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