研究課題/領域番号 |
21K13193
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
杉木 志帆 香川大学, 教育学部, 講師 (00713033)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 人権条約 / 域外適用 / 領域外適用 / インターネット / 越境環境損害 / 大量傍受 / 欧州人権条約 / 国際刑事司法共助 / 管轄 / 国際人権 |
研究開始時の研究の概要 |
人権条約は通常、その締約国領域内で適用される。だが、現代国際社会では、国の不適切な政策がその領域外で害を生じさせる場合、当該国の法的責任を問うべきとの認識が強まっている。この認識の下、近年では、国の行為とその領域外で生じた害との間に因果関係がある場合、人権条約を締約国領域外でも適用すべきとする実行がみられる。 本研究はこうした人権条約の域外適用において、国と人との間の権利義務関係がどのように再構築されるのかを問う。それにより、人権条約上の国と人との間の権利義務関係が今日、垂直的な権力・支配関係だけでなく、水平的な損害賠償の関係でも捉え直されていると示す。
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研究実績の概要 |
人権条約締約国は通常、その自国領域外にいる者を自らの管轄の下におかず、彼らに対して当該条約上の人権保障義務を負わない。だが、現代国際社会では、国が不適切な政策を取ったためにその領域外で害が生じる場合、それを放置することはできないとの認識が強まっている。この認識の下、近年では、国の行為とその領域外にいる者に生じた害との間に事実上の因果関係がある場合、人権条約を締約国領域外で適用すべきとの人権裁判所の判断や学説がみられるようになった。 令和5年度は、令和3年度より実施してきた研究の中間まとめとして、国際法外交雑誌への論文寄稿を中心に研究をおこなった。そして、人権条約における国と人との間の権利義務関係は、国が人を支配することを根拠に構築されるだけでなく、国が軍事活動をおこなった、または人に害を生じさせたという因果関係によっても構築されるといいうる場合があることを、越境環境損害、国際刑事司法共助、インターネット通信の大量傍受などの最近の事例を含めつつ確認した。その上で、今日、国が特定の人ないし不特定多数の人が住む特定の領域を支配することで人権条約の領域外適用が可能となる場合(支配型の領域外適用)と、国の支配を必要とせずに人権条約の領域外適用が可能となる場合(異質型の領域外適用)との2つが併存状態にあることを示した。 また、イギリスのLauterpacht Centre for International Lawなどを訪れ、短期間の在外研究をおこなった。在外研究中は資料収集のほか、国境を越えた人の移動に伴う諸問題について研究者らと議論をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、令和3~4年度におこなった判例分析の成果を踏まえつつ、研究の中間まとめをおこなうことができた。令和6年度以降の研究の下準備が整ったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度以降も引き続き、人権条約の域外適用が事実上の因果関係に基づく人権保障システムによっても許容されうる理由を、理論上どのように説明できるかを検討する。そのために、本研究では今後も、国が人権保障義務を負う理論的根拠について論じる国内外の学説を整理し、分析をおこなう。
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