研究課題/領域番号 |
21K13199
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 広島大学 (2023) 大阪経済法科大学 (2021-2022) |
研究代表者 |
稲谷 信行 広島大学, 人間社会科学研究科(社)東千田, 准教授 (10824279)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 管理職労働者 / 管理職員 / 解雇規制 / 業務執行役員 / 解雇制限法 / 業務執行者 / ドイツ労働法 / 母性保護法 / 損害賠償責任 |
研究開始時の研究の概要 |
管理職や高度専門職等、企業の上位職層の労働者は、職務での裁量の程度や経営における重要性において、一般労働者とは異なる利益状況にあり、それゆえ労働法上もそのような利益状況に即した特別な規制を行う必要がある。しかし、解雇規制の領域では、解雇権濫用法理を中心とした現行の解雇法制がそのような上位職層労働者の利益状況に十分に適応できていない。雇用慣行の変化により、中途採用の管理職や高度専門職に関する解雇紛争が増加する中で、解雇規制のあり方を再検討する必要は大きくなっている。そこで本研究は、ドイツ法との比較研究を行い、上位職層の労働者について、どのような解雇規制がなされるべきかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、主として、ドイツにおける有限会社の業務執行役員への解雇規制の適用関係について、判例や文献の調査・検討を行った。具体的には、まず、解雇制限法や事業所組織法における適用除外規定の検討である。これらの適用除外規定は、労働者性の有無にかかわらず、法律の適用を除外する規定と解されている。その結果、有限会社法上の業務執行役員は、それぞれの法律による解雇保護を享受できないことになる。そのため、労働者性が認められる場合であっても、解雇保護が享受できないことの正当化根拠について検討を行った。また、集団的解雇規制については、EU法との衝突が生じており、この点も法適用において重要な問題となる。 次に、事業譲渡時の解雇規制や一般平等取扱法における解雇規制などの適用関係について検討を行った。これらの規定は上記のような適用除外規定を有していないため、あくまで「労働者」性によってその適用の有無が決定される。もっとも、その際の「労働者」の意義については、それぞれの規制ごとに異なっている。これは基礎にあるEU指令の規定の違いによるものであるが、その結果、業務執行役員への解雇規制の適用関係についても違いが生じることになる。 加えて、労働裁判所法における裁判管轄に関する適用除外規定についての検討も行った。同規定の適用要件をめぐっては、近時、連邦労働裁判所の判例が変更され、同規定の適用範囲が狭められた。その結果として、業務執行役員による連邦労働裁判所への出訴の可否は、基本的にはその労働者性の有無によって決まることになる。この点で、適用除外規定の意義が減殺されているということができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初の予定では、業務執行役員については解雇制限法と母性保護法の適用関係を主たる検討対象と考えていたが、文献調査の中で、より横断的・包括的に解雇規制の適用関係を検討する必要があると考えるに至り、事業譲渡に係る法制や一般平等取扱法、両親時間法制における解雇規制についても検討の対象を広げた。また、解雇規制の実現手段という観点から、連邦労働裁判所の裁判管轄についても検討の対象に加えている。これらの理由により、ドイツ法の文献調査に予定よりも時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、これまでのドイツ法の検討の成果をまとめ、論文として公表する。 加えて、日本法における会社役員への労働法上の規制の適用関係について検討を行う。
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