研究課題/領域番号 |
21K13205
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 (2022) 大阪市立大学 (2021) |
研究代表者 |
徳永 元 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 准教授 (50782009)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 責任主義 / 刑事責任 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「『責任なければ刑罰なし』という、刑法における責任主義とは何か」を論究する。本研究の目的は、「刑法における責任主義とは何か」を解明することによって、責任主義の法的意義を明確にすることである。今まで取り組まれてこなかった、責任主義違反の主張に実定法上の根拠を付与すること、刑法に固有の責任概念を明らかにすることを試みる。具体的には、①責任主義違反とは何か、つまり、「いつ責任主義に違反したことになるのか」(要件論)、「責任主義に違反するとどうなるのか」(効果論)、②その前提として、「規範的責任論」とは、どのような考え方なのかを検討する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、九州法学会2022年度(第127回)学術大会(令和4年6月18日、於九州大学)において、「ドイツ連邦憲法裁判所における責任主義」を報告し、その後の質疑応答を踏まえて、同名の論文を会報誌において公表した。報告および論文においては、ドイツ連邦憲法裁判所における責任主義への言及を整理し、その前提となる責任主義のイメージを具体化させることにある程度成功した。ただし、そこでの責任主義への言及は、憲法上の法的根拠の論証も含めて、きわめて多義的であり、その意味内容および法的位置付けを明確にすることは非常に困難であることも確認された。したがって、今後は、より理論的な研究を深めるとともに、ひるがえってドイツ連邦憲法裁判所のテキストを再解釈する必要性があるということが明確になった。さらに、ドイツ連邦憲法裁判所のテキストの分析からは、刑事手続における真実概念や権利保障の議論が責任主義の理念と密接に関係していること、この点に関する先行研究がほとんど存在しないことが明らかとなった。 20世紀前半のドイツにおける規範的責任論の展開については、調査の結果、先行研究を超えるだけの成果が得られる見込みは少ないことが確認された。むしろ、19世紀前半の近代刑法の成立段階における責任概念からの大きな流れの中で、規範的責任論がどのような意義を持っていたのか、それが現在、たとえばドイツ連邦憲法裁判所における責任概念の理解にいかなる影響を及ぼしているのかを論じる方が有益であると現在では想定している。 また、次年度以降の研究の準備として、ヘーゲル学派刑法学における刑罰・責任概念の理解およびその問題点や、近年の「責任と応答」をめぐる諸論稿に関する予備調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、ドイツ連邦憲法裁判所の判例の分析を行ったが、判決文のテキストが想定以上に整理されていないものであり、ドイツおよびわが国においても、そこから直接の結論を得ることはできないとされている点が確認された。2022年度の研究では、ドイツ連邦憲法裁判所のテキストに、責任主義の意義を再検討するてがかりが見出せることは確認したものの、その理論的補強にあたっては、国内外および刑法学内外の責任概念に関する理論的検討が不可欠であることが分かっている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、責任概念に関する近年の理論的考察と、前年度の研究成果であるドイツ連邦憲法裁判所における責任主義とを関連付けつつ、責任概念および責任主義の持つ理論的および実践的意義の両方を包括するような、展開の可能性を備えた責任論を構築する。 具体的には、日本刑法学会全国大会や日本犯罪社会学会といった、わが国の刑事法学界を代表する学術大会において報告の機会を得る。また、個別の小規模の研究会において、海外文献報告や研究成果報告を行い、最終的な成果発表を視野に入れた洞察の蓄積にはげむ。
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