研究課題/領域番号 |
21K13209
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
山本 和輝 東京経済大学, 現代法学部, 准教授 (10880817)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 正当防衛 / 緊急避難 / 住居権 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、サイバー攻撃のリスクが認識されるようになっており、いかにして、国家機関がサイバー攻撃に対する対抗措置(サイバー反撃)を講じていくべきかが課題となっている。それに伴い、サイバー反撃権を認めるための法的構成を検討する必要性も高まっている。 このような背景を踏まえ、本研究は、サイバー反撃権を認めるための法的構成を検討する上で論じる必要がある諸論点の検討を行い、サイバー反撃権を認めることができるか、あるいは認めることができるとしてどのような法的構成をとるべきかについての提言を行うものである。
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研究実績の概要 |
2023年度は、国家機関によるサイバー反撃の刑法的正当化に関する研究を行った。その際、主としてドイツ刑法学の議論状況を調査対象とした。本研究の調査結果は、以下の通りである。 まず、ドイツ刑法学において、国家機関によるサイバー反撃の刑法的正当化が活発に論じられた形跡は確認されなかったが、若干数の文献がこの問いを論じていた。それによれば、国家機関によるサイバー反撃を正当化する解釈論上の理論構成として、(1)正当防衛・緊急避難規定の援用、(2)ヴァーチャルな住居権の援用、(3)公法上の授権規範の援用という三通りの構成を想定しうることが明らかとなった。 このうち、理論構成(1)を採用するためには、国家機関は無制限に一般的正当化事由の行使主体たりうるとする説(刑法説)の採用が前提となる。しかし刑法説を採用した場合、公法上の授権規範が存在しない場合、又はより限定的な公法上の授権規範しか存在しない場合でも、一般的正当化事由を援用しうることになり、その結果公法上の授権規範が空文化しかねないとの重要な批判がある。 次いで、理論構成(2)によれば、住居権の特性上、ヴァーチャルな住居領域「内部」での危険防御は正当化しうるが、住居領域「外部」での危険防御は正当化しえないことになるとされる。しかし、これは、自己のシステムやネットワークの「外部」にまで及びうる能動的サイバー防御を正当化しえないことを含意するため、適切な問題解決とはいいがたい。 それゆえ、理論構成(3)については、ドイツにおいて、サイバー反撃を正当化する可能性を有する公法上の授権規範としてどのようなものがあるかにつき調査途上の段階にあること、また現時点でドイツ法と日本法に少なからぬ相違があることが確認されたことからかかる変数をどのように考慮すべきかを思案する必要が生じたことから、次年度以降でより詳細な調査を行うことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、今年度は、ドイツだけでなく、アメリカをも調査対象とした研究を行う予定であった。このうち、ドイツを調査対象とした研究は、研究実績の記述欄で上述したように、ドイツ刑法学の議論状況を一通り確認することができた。この意味において、当初の研究計画は一定程度達成されたものと評価することができる。もっとも、本研究課題がその性格上、公法上の授権規範についても調査を必要とするものであったが、この点については、上述したとおり調査・検討は完了しておらず、この点も次年度以降の検討課題として積み残されることとなった。 これに加えて、本研究課題を論じた文献が少なくともドイツにおいてほとんど見当たらず、調査が難航したことに関連して、結果的にアメリカを調査対象とした研究を行うための時間的余裕がほとんど確保できなかった。そのため、この意味においても研究に遅れが生じることとなった。 もっとも、当初の研究計画の時点で、今年度までの研究成果の公表に向けた準備を行うことだけでなく、次年度は研究に遅れが生じた場合にはその遅れを回復する期間に充当することを想定していたことも勘案すれば、未だ研究の遅れを回復することが可能である状況にあると言える。それゆえ、上記区分が適切であると考えた。
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今後の研究の推進方策 |
先述したように、次年度は、積み残されているドイツ法の調査を引き続き行うとともに、アメリカの法状況の調査を行う予定である。またこれに加えて、これまでの研究成果を公表するための準備作業も行う予定である。
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