研究課題/領域番号 |
21K13214
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
西脇 秀一郎 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (70843556)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 情報請求権・情報権 / 民法 / 非営利社団 / 民法上の組合(組合契約) / 検査権(調査権・監視権) / 構成員権・構成員の地位 / 閲覧謄写(複写)請求権 / 入会集団 / 解任権 / 情報(請求)権 / 民法上の組合 / 法人 / 構成員権・管理権 / 閲覧謄写請求権 / 情報権(情報請求権) / 民法・民事法・ドイツ法 / 共益権(管理権)・自益権(財産権) / 社団(法人)・組合(会社) / 意思決定 |
研究開始時の研究の概要 |
「団体の構成員は多数決による団体の意思決定に拘束される」。各種の団体類型における「団体的拘束力」がなぜ正当化されるのかの理由づけに対し、法解釈学において理論的基盤を整え、構成員の権利保障を踏まえた判断枠組みを構築することが求められている。 本研究では、非営利団体(社団及び組合)を対象とし、ドイツ法での議論をもとに、構成員が適正な情報の取得・共有に基づき団体運営に参与するための基礎的な権利を「情報権」と定義づけ、当該権利と「団体的拘束力」との相関関係を明らかとすることに取り組む。これらの分析を通して情報権保障の積極的意義を解明し、日本の法解釈学及び団体運営実務への有意な示唆を得ることを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、非営利団体(社団または組合)を対象とし、ドイツ法上の理論展開を参考として、構成員が適正な情報の取得・共有に基づき団体運営に参与するための基礎的な権利を「情報(請求)権」と定義づけ、その権利保障が適正な団体運営に(どのように)役立ち得るか、および、団体的な拘束力の正当性を根拠づける諸要因・条件となりうるかについて、日独の法理論研究を行うことを目的とする。 本年度では、昨年度までの成果である民法上の組合における組合員の検査権制度の検討と、団体運営情報を取得した上で不適正な業務(決定)執行を是正する際に重要となる各種の権利(とくに解任権)の検討とを踏まえて、団体運営および団体の意思決定に参与する場面において情報(請求)権が含意する積極的意義を捉えるために、ドイツにおける人的会社法の現代化のための法律による社団および民法上の組合の改正内容に目を向け、Informationsrechteに関する新規定のもつ意義などについて関連資料の整理と分析を行った。 併行して、日本の判決例・学説上で取り上げられる各種の団体について、内部組織にかかわる法規範の展開や団体運営の実態に関して調査を進め、成果の一部については学会・研究会にて報告する機会を得た。具体には、権利能力なき社団(町内会)に関する最新判例の研究報告、入会集団を取り巻く理論状況に関する研究報告、共同所有論に関する研究報告などを行い、また、日本法社会学会2023年度学術大会ミニ・シンポジウムではディスカッサントとして報告をする機会を得るなど、研究遂行に不可欠な進捗・成果報告の機会を確保した。 ほかに、地域資源管理を担う団体活動の実態(実体)分析のため、専門職である士業団体(愛媛県土地家屋調査士会)および林野庁などの実務担当者へのヒアリング・意見交換の機会を得て、職能団体や財産管理型の団体運営の課題を把握し、事例分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 本研究は、非営利団体の構成員が適正な情報の取得・共有に基づき団体の運営に参与するための基礎的な権利を「情報権(あるいは情報請求権)」と定義づけ、当該権利保障の積極的意義を検証し、ひいては「団体的拘束力」ないしガバナンスを正当化する諸要因・条件の一端を理論的・実証的に明らかとすることを主たる目的とする。 2023年度では、当初、前年度までに公表した研究成果の内容を踏まえて、引き続き、日独の文献収集・翻訳・分析などの作業を進め、その成果の一部を公表する予定としていた。しかしながら、2023年度中に病気により入院・手術が必要となる事態が生じたため、若干の期間ではあるものの、その影響から研究調査活動に制約が生じた。そのため、計画の一部修正が必要になったことを踏まえ、総合的に考慮して、少なくとも2023年度の当初計画との関係においては「やや遅れている。」と判断した。 もっとも、2023年度も、文献研究と併行して、団体の諸活動に伴う課題把握などの実態面の調査研究を進めることができた。その成果の一部として、権利能力なき社団、入会集団、認可地縁団体の法的課題に関する研究報告を複数の研究会にて行い、日本法社会学会ではミニ・シンポジウムでのコメント報告を行う機会を得た。また、愛媛県協同組合協議会、愛媛県土地家屋調査士会との連携講座や学術交流の機会を設け、さらに林野庁の実務担当者との意見交換の実施などにより、各種団体の事例分析のための連携協力体制の構築を進めることができた。 このように、適宜、適切に研究計画を修正しつつ研究調査を進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、引き続き団体構成員の情報(請求)権に関する日独の関連文献の渉猟・精読・整理・分析・翻訳作業を進めるだけでなく、前年度までの研究調査を取りまとめ、関係機関との連携協力体制を活かして、具体的な成果の公表を目指す。 まずは、日本の学説・判例上で俎上に載せられることの多い団体類型ごとの構成員の権利(および団体の内部組織規範)に関する法規整のあり方などを検討した成果につき、年度内に共著書籍を刊行する予定である。また、本研究の遂行においては、法主体の側面からだけでなく、主体論とも密接に関連する、複数主体間での権利の帰属・行使の態様を考察する視角も必要なことから、共同所有の権利関係にかかわる研究成果についても年度内に成果の一部の公表を予定している。 上記に加え、これまでに、「情報(請求)権」に関して基礎的な視座を提供する体系書等の書籍・文献、および、新たな法改正動向にかかわる資料などの収集を進めることができたことから、全体的な研究成果のとりまとめのために、「情報(請求)権」の規定・判決例・学説の分析を進展させる。加えて、引き続き、積極的に各種の学会・研究会において研究報告を行うこととする。 また、本研究では、各種(非営利)団体の運営・ガバナンスの現況を検証するために、これまでも官庁・地方公共団体・事業体・士業団体との連携協力体制の構築に努めてきたが、引き続き、本研究に必要な限りで外部機関・実務担当者との連携体制を充実化させる。とくに、これらの成果については、学術的意義だけにとどまらず、教育や社会貢献活動を通じてより広く社会に還元することを試みる。一例として、協同組合や入会林野に関する取り組みに加え、愛媛県土地家屋調査士会の会員および役員研修の機会や、意見交流を通じた実務的課題の把捉、また、土地家屋調査士会の中国・四国ブロック協議会との関係構築などを予定している。
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