研究課題/領域番号 |
21K13215
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高岡 大輔 九州大学, 法学研究院, 准教授 (60850857)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 信用毀損 / 名誉毀損 / 権利侵害警告 / 真実性の抗弁 / 相当性の抗弁 / 信用毀損罪 / 営業損害 / 逸失利益 / 無形損害 / 信用危殆化 / 不法行為 / ドイツ法 |
研究開始時の研究の概要 |
民法上、名誉毀損に関しては独特の法理が発展し、信用毀損もこれに準じて扱われてきた。しかし、法益の性質の点で名誉と信用には差があり、そのことは刑法の構成要件にも表れている。また、侵害態様の点でも、信用毀損は報道等によって起こる場合のほか、競業者が交渉等の一環としていわゆる権利侵害警告を行う場合や、汚染源の作出によって汚染されていない製品等も風評によって評価が低下する場合にも問題となりうる。 こうした事例は従来は個別的に検討されてきた。本研究は、ドイツ法との比較により信用毀損の観点から統一的把握を試みた上で、各事例類型の特性に応じて、名誉毀損法理の射程を限定するなど適切な責任の規律を考察する。
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研究実績の概要 |
信用毀損およびこれと密接に関係している営業侵害について、ドイツ法及び日本法の判例・学説を検討した。その結果のうち、営業侵害については、日本私法学会における個別報告「営業の間接的侵害による責任」を行った。その要旨は学会誌「私法」に掲載される予定である。 信用毀損については、特に最大の類型である名誉毀損型の信用毀損について集中的に検討し、その成果である「信用毀損による不法行為と名誉毀損法理」を法政研究89巻1号に投稿し、掲載された。この論文においては、学説において信用毀損には名誉毀損とは異なる固有の法理を適用すべきことが主張されているにもかかわらず、裁判例が信用毀損に名誉毀損法理を適用しているという問題状況において、信用毀損固有の法理があるとすればその適用対象をどのように考えるべきかを論じた。そして、ドイツ法の議論の展開を参照しつつ、信用と名誉とを「低下させられた社会的評価の対象」という観点から区別することが困難であること、むしろ財産的損害の賠償と人格的利益の侵害に対する慰謝料とを区別し、前者こそが名誉毀損法理に馴染まないものであることを指摘した。そして、名誉毀損と信用毀損が競合する裁判例を、古典的意味での信用の侵害、刑事判例において信用毀損罪における信用の一内容と認められた商品・サービスの評価に対する侵害、それ以外の人格的侵害に伴う営業上の損失に分けて詳細に検討した。その上で、裁判例が財産的損害にも名誉毀損法理を適用すること、とりわけ加害表現の真実性が真偽不明の場合にも、無形損害の算定の考慮要素という形で財産的損害を考慮することを批判し、財産的損害は信用毀損固有の法理の適用対象とすべきで、刑法や不競法における信用毀損と同様に、加害表現の反真実性が立証されることを要求すべきであると論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
信用に対する侵害を類型的に検討するに当たっては、営業侵害との関係性を踏まえつつ、その実際上最大の類型である名誉毀損型の信用毀損が最も重要であるところ、この類型についてはドイツ法と比較しつつ裁判例を分析し、考察を加えて、その成果を論文として公開することができた。ただし、謝罪広告・差止請求についてはまだ検討を加えることができていない。 また、名誉毀損型の信用毀損のうち、公的機関への情報提供によって生じる信用損害については、上記論文では検討対象から除外したところであり、特に例の多い不当告訴事例や不当執行・仮執行事例、不正競争における混同惹起行為等における信用損害について、保護法益としての信用の分析という観点から、なお検討を進める必要がある。 それ以外には、風評型の信用毀損、すなわち第三者が環境汚染や違法行為など被害者の評価を実際に低下させる事実を生じさせているが、報道やインターネット上の表現等において、その実際に生じた事実に関連するが真実の範囲を超えて過大に被害者の評価が低下させられたような事案に関して、当初の研究計画から扱う予定となっていたが、まだ検討することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
信用毀損事例においては謝罪広告や差止請求が損害賠償請求に劣らぬ重要性を有しているが、これらについてまだ検討を加えることができていないことから、今後、ドイツ法等の外国法とも比較しつつ、判例・学説の検討を進めたい。 また、名誉毀損型の信用毀損のうち、公的機関への情報提供によって生じる信用損害については、上記論文では検討対象から除外したところであり、特に例の多い不当告訴事例や不当執行・仮執行事例、不正競争における混同惹起行為等における信用損害について、保護法益としての信用の分析という観点から、なお検討を進めたい。 風評型の信用毀損、すなわち第三者が環境汚染や違法行為など被害者の評価を実際に低下させる事実を生じさせているが、報道やインターネット上の表現等において、その実際に生じた事実に関連するが真実の範囲を超えて過大に被害者の評価が低下させられたような事案に関して、ある程度判例の収集等を行ったが、さらに検討を進めたい。
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