研究課題/領域番号 |
21K13216
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
内藤 裕貴 東北学院大学, 法学部, 准教授 (10808322)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 経営判断原則 / 株式法 / 取締役員の損害賠償責任 / 実質株主 / 株主代表訴訟 / 訴訟許可手続 / ドイツ株式法 / 株式法148条 / 取締役の責任追及 / 会社法 / 責任追及訴訟 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、経営判断原則が取締役に対する安易な責任追及手段との関係で生成・発展してきたとする会社法学における一般的な理解を再検討するために、従来の研究ではあまり着目されてこなかったドイツ株式会社法における取締役員の責任追及手段の実態を明らかにする研究である。具体的には、ドイツにおける取締役員の責任追及手段の実態を19世紀にまで遡った上で、現行法下の株主代表訴訟制度が実際にどのように機能しているのかを明らかにしつつ、同国の責任追及手段が経営判断原則の生成・発展にどのような影響を与えたかを解明し、ドイツ法の経験からわが国の株主代表訴訟制度に対する示唆を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度(2023年度)は、ドイツ法において株主代表訴訟の対象となる取締役の会社に対する損害賠償責任(株式法93 条2項)について、とりわけ経営判断に際しての責任について焦点をあてて、その内容を検討した。具体的には、ドイツでは、取締役の経営判断の当否をめぐって、裁判所は事後的にその是非について積極的に審査しないという経営判断原則(business judgment rule)というアメリカ法由来の法理が株式法93条1項2文において成文化されているところ、本年度は、株式法93条1項2文に関する議論を検討して、その各要件が柔軟に解釈されていることを明らかにするとともに、これらの議論や株式法93条1項2文の立法過程を踏まえた上で、わが国における取締役の経営判断に係る責任の議論につき、新たな示唆を提示した。そして、その成果は、2023年10月に開催された日本私法学会第86回大会個別報告(第三部会)における研究報告にて表れている(2024年度には、同学会の会誌でもある「私法」の第85号にて報告要旨が掲載される予定である)。また、代表訴訟を提起する主体である「株主」の意義に関連して、ドイツにおける実質株主開示規制についても検討を加えた。そこでは、ドイツにおける実質株主開示規制の内容をドイツ有価証券取引法ならびに資金洗浄法の観点から明らかにした。その成果については、金融法務事情2217号ならびに東北学院大学法学政治学研究所紀要32号において研究論文として公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】の箇所でも述べたように、本年度(2023年度)は、ドイツにおける取締役の損害賠償責任、とりわけ経営判断局面における取締役の損害賠償責任の内容について明らかにしたが、所属機関において所蔵する資料も少ないことも相まって、その文献調査やそれに対する分析に多くの時間を費やす結果となった。また、かかる研究を遂行する過程で、新たに関連する議論(AIを活用した経営判断と取締役の責任のあり方)が、近時のドイツにおいて展開されているこが判明し、その議論を捕捉することにも要した。 これらの事情により、本課題研究の本論にあたるドイツにおける取締役員の責任追及制度、とりわけドイツ株式法上の株主代表訴訟制度に対する調査・研究が進まなかったため、進捗状況の評価を【やや遅れている】と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ドイツにおける株主代表訴訟制度について、わが国の代表訴訟制度と比較・検討した上で、2024年度末の論文の公表を目標とするとともに、本年度において議論を補足した近時の生成AIを活用した取締役の経営判断とその責任についても検討を試みたいと考えている。 前者については、関連する文献収集の方法を改めて見直したいと考えている。具体的には、2024年4月より所属機関が新たなドイツ法の文献に関するデータベースを契約したため、従前は学外図書館に大きく依存していた文献収集をあらため、これを上手く活用して文献収集の効率性を図りたいと考えている。後者については、本年度までの調査によって得られた研究をまとめ上げ、研究成果の公表に向けて活字化するとともに、その叩き台を研究会などの場で学外の研究者からレビューを得たいと考えている。そして、こちらについても2024年度末には所属機関の紀要等を通じて研究成果として公表したい。
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