研究課題/領域番号 |
21K13223
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
畑中 麻子 立命館大学, 法学部, 准教授 (80755497)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 知的財産 / イノベーション / 紛争解決 |
研究開始時の研究の概要 |
現代社会におけるADRを含む広義の司法機関は、紛争解決という一義的機能のみならず、立法時に予見できない技術革新がもたらす権利の不均衡を事後的に調整することで規範定立に寄与している。本研究は「イノベーションの促進において紛争解決が果たす役割は何か」という問いを立て、知的財産紛争が付託されるフォーラムを総合的に考察する。世界的な潮流を踏まえた上で研究成果を日英仏独語によって多彩かつ国際的に発信し、先駆的な研究展開を試みるものである。
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研究実績の概要 |
(1)「知的財産紛争に関する総合的研究」を課題とする本研究は、「イノベーションの促進において紛争解決が果たす役割は何か」という問いを立て、三つの論点を中枢に知的財産紛争が付託されるフォーラムを総合的に考察することを目的とする。三年目である2023年度は、計画されていた学会報告及び論文刊行を通じて意欲的に国内外へ研究成果を発信した。 (2)年度前半は国内外の学会で公募採択された個別報告を行い、世界各国の知財研究及びADR研究第一人者らと意見交換を行なった(「調停最適化論 -知財紛争を例として」第19回ADR仲裁法学会、及び「The Social Function of IP Disputes in Sociology of Law - Fuel for Innovation?」第41回ATRIP世界大会)。特に後者は世界的にも新たな試見である中、多くの建設的なフィードバックを得るに至った。年度後半は学会報告成果を中心に論考としてまとめ、その一部は既に刊行された(「Designing Mandatory Mediation for IP Disputes -An Impediment to the Right of Access to Court?」九州大学法政研究90巻3号(2023)227-259頁)。また、これまでの研究蓄積を通じて様々な形で社会貢献を果たすことができた(「日本及び欧州における知財調停の現状と課題」日本知的財産仲裁センター 2023年調停人等候補者研修会、「東と西の狭間で -第19回仲裁ADR法学会及び第41回ATRIP個別報告を終えて」立命館ロー・ニューズレター96号(2024)10-13頁)。 (3)この他、後述の国際共同研究実施に向けた種まきを行い、対面及びオンラインを通じた協議を進めた(2023年7月13日於立命館大学等)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)今年度は、①研究成果の発信、②和解に関する実証的な研究調査、③法社会学における紛争理論の文献調査、④第二論点(投資仲裁)の文献調査の四点を研究課題としていた。盛り沢山ではあったが、①については前述の通り十分な成果を挙げることができており、また、②についてはヒヤリング調査結果、③については紛争が規範制定に果たす役割について論じた英独日語の先行文献を整理し英語でまとめるなど、一定の成果を得られた。④については時間的制約が相まって次年度以降の課題として残されることになったが、総じて研究活動は十分な進捗を見せていると言える。 (2)並行して多数の学会およびシンポジウムに参加し、定例の国内学会(著作権法学会等)及び国際学会(18th EPIP Annual Conference)の他、AI技術を利用したデジタルエコノミーに関する研究会に積極的に出席し、特に早稲田大学Global Patent Law Conference・国際知財司法シンポジウム・欧州知財庁4th IP Mediation Conferenceなどで研究課題を検証する機会に恵まれた。また、前年に続き海外での文献調査を実施し(ドイツ・マックスプランク イノベーション研究所)、比較法研究を継続している。更には、こうした国内外での活動による波及効果として国際共同研究に着手することができた。EUにおけるFRAND算定等をめぐる新たな紛争解決法制度の立法的展開、また日本EUデジタルパートナシップといった政策的取組みを念頭においたもので、早速EU及びイギリスで立法ないし司法判断の発展が見られる調停前置の実効性についてまとめた考察を国際学会の個別報告公募に応募した。 (3)以上の通り、研究計画で予定されていた活動のみならず発展的なプロジェクトも始動しており、次年度以降における成果へと結実することが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である2024年度は、①国際共同研究、及び②第三論点(知財紛争における専門法廷の機能)を中心に研究調査を進めることとする。 (1)①について、2022年EUデジタルサービス規則第21条で設けられたデジタルプラットフォームによる著作権紛争解決制度の実効性について基本的人権を視座とした比較法研究を予定しており、共同研究者との研究会を通じて論点の整理や法整備の進捗について調査を進める。ヨーロッパにおける研究機会の確保のみならず、日本への研究者招聘を通じた国際的な活動が展開される見込みである。②については欧州及び日本での調査項目を分割し、前者については利用が開始された統一特許裁判所の現状と課題について、また後者については特に知財高裁における、いわゆる第三者意見募集制度について検証を行いたい。これらは文献調査にとどまらず、実務的側面の理解に必要な諸活動を伴うもので、可能な限り幅広く多元的に実施することが目標である。 (2)この他、前年度から引き継いだ第二論点の研究調査に努めたい。残された時間には限りがあることが予想されるため、先行研究の整理と論点精査を優先することとする。同時に、本研究の4年間の研究成果を総合的に検証する時間を設け、新たな研究課題の模索へと繋げる予定である。 (3)以上の計画を推進するため、引き続き国内外の学会およびシンポジウムに参加し、研究課題および成果の公表に努めながら客観的批評を検証する。同時に、国際共同研究の発展を目的とした国際ネットワークの構築に努める。また、海外での文献調査も継続し、より多くの研究成果を国際発信できるよう英語でのアウトプットを優先する。
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