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「開発」の起源――貫戦史の観点から

研究課題

研究課題/領域番号 21K13244
研究種目

若手研究

配分区分基金
審査区分 小区分06020:国際関係論関連
研究機関成蹊大学 (2022-2023)
東京大学 (2021)

研究代表者

帶谷 俊輔  成蹊大学, 法学部, 准教授 (20823420)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワード国際連盟 / 国際連合 / 開発 / 開発史 / 世界銀行 / 戦間期 / 技術 / 帝国史 / 振興
研究開始時の研究の概要

本研究は、貫戦史的アプローチにより、国際開発の起源が戦間期の国内開発や国際機構を通じた国際協力、そして第二次世界大戦の占領地経営や、戦争を通じた権力の「辺境」への浸透、それに対する国際協力・援助にあることを明らかにする。戦間期の経験や学知は、テクノクラートを通して直接的に各国の開発政策や国際連合の平和維持活動、世界銀行の開発プロジェクトに継受されていた。研究が蓄積されつつある主要帝国から国際連合へという経路に加えて、戦間期の多国間主義や戦時協力の果たした役割を提示する。

研究実績の概要

本研究は国際開発の起源を戦間期と第二次世界大戦中に遡って明らかにし、その性質がどのように戦後にまで引き継がれたかを検討している。国際開発史の起源をトルーマン大統領のポイント・フォー計画とする通説は著しく相対化されている。しかしながら、国際開発の貫戦史性が指摘される場合にも、そこで取り上げられるのは植民地統治の転換や委任統治の導入であることが多い。国際連盟から国際連合への直接的継承や、非植民地における国内開発から戦後のそれへの継承は、実のところ十分に明らかにされていない。本研究は、国際連盟の具体的なプロジェクトや第二次世界大戦中の戦時協力や占領統治、辺境開発に着目して、国際開発の新しい歴史を描き出す。
イデオロギーも地理も超えた普遍性を標榜する「開発」が生まれ定着する過程は、冷戦以前にこそ着目することで明らかになる。戦間期には既にイデオロギー対立の時代は始まっており、また対象となる地域の個性を重視する学知が定着していた。そのなかで、開発に動員される「技術」や「気候」「地方」の含意の変化が開発の普遍化をもたらした。そのことこそが冷戦と脱植民地化の時代において開発を国際社会の花形プロジェクトとしたのである。一方で、その変容は単なる近現代化や発展のバラ色のストーリーでは無く、含意の変化の過程において付随した欺瞞や問題性もまた継承されていたことを明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は台湾の中央研究院近代史研究所档案館、国立台湾大学、国立中山大学、アメリカのコロンビア大学、プリンストン大学、議会図書館、国立公文書館で調査を実施した。これにより、戦間期の国内開発及び第二次世界大戦中の戦時協力、そして戦後間もなくの開発について概観するだけの成果を得ることができた。
台湾の植民地統治における開発の経験は内地の「振興」及び戦時中の東南アジア調査に動員されたが、そこでは気候や風土の相違が強く意識されていた。戦間期において、特にテクノクラートにとって、「固有性」の発見と結びついた開発の学知はどこでも通用する普遍的なものでは必ずしもなかった。しかしながら戦時動員における国家の要請が、従来の文脈を無視した普遍的適用を押し進めていったことが明らかになった。
また、ソ連の誕生及びファシズムの台頭がイデオロギー対立の時代の開始を告げたのが戦間期であるが、1930年代に至りイデオロギーを超越する国際協力の論理が求められた。それが「政治」のアンチテーゼとしての「技術」であり、開発でもイデオロギー、地域、気候を超えるものとして用いられていく。それは第二次世界大戦後の冷戦と脱植民地化の時代にも通用可能なものであったと同時に、無理に政治と技術の二分法を当てはめるが故の欺瞞も継承されたことがうかがえる。
その戦後においては開発の非イデオロギー性が強調される一方で、戦間期や戦争終了直後にはまだ残っていた開発のアド・ホックで融通無碍な性格は消え、主権国家の構築と国家主権の擁護に資することが至上命題となる。
これらの成果を、シンクタンクや出版社の研究会における報告に一部盛り込んだ。また、対中技術協力における「技術」と国家建設の関係については論文執筆を進めている。

今後の研究の推進方策

これまでの資史料収集と報告の実施によって方向性はかなりの程度定まっている。今後は、難民支援及び「難民」の範囲の確定、非公式帝国や内国開発においてこそ開発の模範となったアメリカの学知等について補充的調査を行う。
そのうえで、現在執筆中の対中技術協力に関する論文を完成し、加えて固有性を発見する学としての植民政策学が普遍的な国際開発の学知に変容する論理についての論文、アメリカの非公式帝国経営のテクノクラートが戦時協力を経過して国際開発の担い手となる過程についての論文、第二次世界大戦後においてこそ主権の規範性が強まる逆説についての論文を執筆する。

報告書

(3件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 2021 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 2022 2021 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 国際連盟期の平和維持――大戦再発防止の使命と国境紛争・内戦調停の前面化のあいだ2022

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 雑誌名

      国連研究

      巻: 23

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] ワシントン体制と中国の国家建設――『極東新秩序の模索』の再読から2022

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 雑誌名

      日本国際問題研究所領土・歴史センター東アジア史検討会成果物

      巻: -

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 国際機構における「技術」と「政治」――戦争・国家建設・ナショナリズムの狭間で2022

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 雑誌名

      日中戦争研究の現在――歴史と歴史認識問題

      巻: -

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 国際連盟期の平和維持――大戦再発防止の使命と国境紛争・内戦の調停の前面化2022

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 雑誌名

      国連研究

      巻: 23

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Between ‘Coercive League’ and ‘Consultative League’: a reappraisal of debates surrounding the ‘Reform’ of the League of Nations2021

    • 著者名/発表者名
      OBIYA Shunsuke
    • 雑誌名

      International Relations of the Asia-Pacific

      巻: 21-3 号: 3 ページ: 465-492

    • DOI

      10.1093/irap/lcaa008

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 国際開発の起源としての国際連盟対中技術協力――財政金融支援の蹉跌と「技術」の独立2024

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 学会等名
      思想と国際政治の交錯を考える会第3回
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 内戦と国際機構――中国内戦における代表権問題や難民問題を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 学会等名
      日本国際問題研究所領土・主権・歴史センター第8回東アジア史研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 「危機」と国際機構――国際連盟において想定される紛争及びその対応の変遷と揺らぎ2022

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 学会等名
      日本国際連合学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 普遍的国際機構としての国際連盟再考――紛争調停から開発まで2022

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 学会等名
      政治学研究会(成蹊大学法学部)
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 戦間期の「開発」――内地・外地・租借地・国際機構2021

    • 著者名/発表者名
      帶谷俊輔
    • 学会等名
      日本国際問題研究所領土・歴史センター 2021年度第1回東アジア史検討会
    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [図書] 日中戦争研究の現在2022

    • 著者名/発表者名
      川島 真、岩谷 將
    • 総ページ数
      360
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      9784130262682
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [備考] 拙著『国際連盟――国際機構の普遍性と地域性』の紹介

    • URL

      https://www.u-tokyo.ac.jp/biblioplaza/ja/F_00152.html

    • 関連する報告書
      2021 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2021-04-28   更新日: 2024-12-25  

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