研究課題/領域番号 |
21K13280
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
テキ アライ 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (40837572)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 移民 / 労働市場 / 結婚 / 結婚市場 / 差別 / 雇用関係 / 外国人労働者 / ミャンマー / 少数民族 |
研究開始時の研究の概要 |
労働市場では,人種や民族等の違いによって雇用や賃金には差別が生じることがよく知られている。しかし, 中国・ミャンマー国境地域の労働市場において,雇用者が自分と文化的に遠い外国人を優先して雇用し,文化的に近い外国人(例えば、同民族)を差別する,といった「同文化差別」が観察されている。本研究は,「同文化差別」の要因を定量的に明示したうえで,その決定メカニズムを究明する。それによって,一定程度の文化的差異が安定的な雇用関係,さらに利潤最大化に導く可能性を示し,近年の移民規制や移民排斥の流れのなか,異文化移民とどう向き合うべきかに関する重要なインプリケーションを提示する。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、労働市場で生じる差別の原因を特定したうえで、現地調査で集計できたデータと情報に基づき、文化的要因を定量的に取り上げることである。具体的には、下記3つの課題を解明する。[課題1]では労働市場における同文化・異文化差別の慣習の存続状況を統計的に分析する。[課題2]では労働市場にける雇用主と労働者の間の文化的差異を指標化する。[課題3]では、雇用主の同文化・異文化差別慣習の背後に潜む行動原理を経済学の理論で解明する。 この目的を達成するには、中国・ミャンマー国境地域の少数民族社会において、綿密なフィールドワークを実施することが必要不可欠である。2021年度および2022年度前半は、COVID-19感染症水際対策のため、現地調査を実施できなかったが、2022年3月において、水際対策の一部緩和により、厳密な調査設計に基づいて、初回の予備調査研究を中国・ミャンマー国境地域で実施した。それによって、[課題1](労働市場における同文化・異文化差別)の慣習の存続状況を確認できた。それのみならず、現地調査の実施により、調査票をさらに精緻化したことができた。さらに、2022年度までに行なった中国内地の若年女性を対象に調査・研究に基づき、女性の出生意欲が低下していることを価値観の変容の観点から解明し、国際学会(Western Economic Association International)で口頭報告を行った。 したがって、前年度に進めていた[課題2](文化的差異の指標化)と併せた今年度の研究実績は、来年度およびそれ以降の精密なデータベースの構築と[課題3](雇用主の同文化・異文化差別のモデル化)の礎となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題の2022年度の実施ステップは、以下の通りである。ステップ①では、2021年度に完成した調査設計に沿って現地調査を2022年8-9月、2022年12月、2023年2-3月、にかけて3回実施する予定である。ステップ②では、[課題2](文化的差異の指標化)に関連する研究の成果を学会で発表し、研究知見を積み上げている。ステップ②については、おおむね順調に実施した。しかし、ステップ①の現地調査研究に関して、2023年3月に水際対策の一部緩和により、予備調査を実施できたが、中国・ミャンマー国境地域の移民労働者の受け入れの規模がパンデミック前に比べてはるかに縮小していると確認できたため、海外現地調査によるデータ収集に限界が生じている。 上記の理由により、研究は遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、COVID-19 感染症対策に関連する出入国の制限がある中、調査地の(再)選定と調査の実施が2022年度の最大の課題であった。2023年3月に水際対策の一部緩和により、予備調査を実施できたが、中国・ミャンマー国境地域の移民労働者の受け入れの規模がパンデミック前に比べてはるかに縮小していると確認できた。そのため、[課題3](雇用主の同文化・異文化差別のモデル化)の解明には、データ不足により、制限される可能性があると認識した。そのデータの量的制限を克服するために、新たな研究手法を導入したい。 また、調査の過程の中で、ミャンマー人(女性)の越境結婚は依然として盛んでいた事実を突き止めた。とりわけ、越境結婚の前提は、中国農村地域女性の都市部への流出が主な原因だと指摘される中、少子化社会に突入した中国において、中国人女性の出生意欲低下もその要因の一つとして解明する必要があると考えた。そのため、2022年度までに行った中国内地の若年女性を対象に調査・研究に基づき、出生意欲が低下していることを価値観の変容の観点から解明している。そのうえで、来年度は、中国国境地域の農村社会における嫁不足を構造的に把握するとともに、出生力低下の要因を探ることにしたい。ミャンマー人結婚移民(主に女性)に焦点をあて、中国内地の女性と比較しながら、越境結婚移民の出生意欲について解明したい。
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