研究課題/領域番号 |
21K13301
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 大阪産業大学 |
研究代表者 |
生田 祐介 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (70801489)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 個人情報 / 人工知能 / 損害賠償責任 / 独占市場 / 寡占市場 / プライバシー / データ / 法と経済学 |
研究開始時の研究の概要 |
製品が人工知能(AI)によって作動する状況の下、損害賠償責任制度の経済厚生上の影響を明らかにしたい。自動運転車や補助ロボットのようなAI搭載型の製品は、自律的に作動するという点で便利であるが、消費者の意思が及ばない範囲で誤作動が生じ、損害を招くおそれがある。こうした背景を受け、主要各国では、規制や損害責任の在り方について、AIを考慮した上での再設計が議論され、法整備が進んでいるところである。通常の製品では、企業の努力や投資のみで品質を高める状況を想定している。しかし、本研究では、AIを通じて品質を高めるために、消費者の個人情報を利用することを考慮して分析を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は,自動運転車のように人工知能で作動する製品(以下,AI製品)の開発や普及が,損害賠償責任ルールとプライバシー規制によってどのような影響を受けるのか,経済理論モデルから明らかにしようとするものである.まずは,人工知能(AI)に関する法的課題を,損害賠償責任の観点から整理した.政策の議論が進んでいることから,欧州連合(EU)を対象に調べた.Buiten et al. (2021) “EU liability rules for the age of Artificial Intelligence”, Centre on Regulation in Europe. によると,AIへの規制は,EU加盟国と産業間で一様に導入されるべきではなく,業界別の規制と上手く調和するよう導入されることが望ましい.特に,高リスクAIについては,それが応用される財・サービスの性質や,それが使われる状況に応じて,損害への責任規則を定めるべきであるとのことである. 他に,本研究テーマと共通する手法や課題を利用して,派生的な研究実績が3点ある.①産業組織論の手法を応用し,寡占市場の分析として,小売電力市場を対象に競争政策の観点から理論研究を行い,査読付き雑誌に論文が掲載された.②独占市場の分析として,スポーツ施設であるスタジアムについて公共財の視点から整理し,その成果は論文として雑誌に掲載された.③本研究は,人工知能を利用したビジネスモデルを対象としている.調査段階で得られた人工知能(機械学習)に関する知見を実践するために,テキストアナリティクスを利用した景気動向指数の開発も行っている.その成果を,日本経済研究センターより招待を受けて,報告する機会を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第一に,研究実施計画に記載した内容での分析について,先行研究との差別化の点で吟味に時間を要しているためである.具体的に,AI製品が顧客のプライバシー情報を利用していることに注目し,顧客のプライバシーを属性とするAI製品の利用における損害賠償責任のあり方について分析している.ただし,損害賠償責任を考慮しない場合と比べて,それを考慮することで得られる知見が小さいにように思えた.しかし,小さな成果かもしれないが,それでも論文として発表する必要があるだろう. 第二に,調査過程で得られた知見を活かした副次的な研究成果をまとめた論文が雑誌に掲載されたこと,招待を受けて研究報告ができたことである.. 以上の2点の状況を踏まえて,進捗状況は「やや遅れている」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
AI製品が顧客のプライバシー情報を利用していることに注目し,顧客のプライバシーを属性とするAI製品の利用における損害賠償責任のあり方について,理論的な説明をできるよう試みる.現在考えている理論モデルについて説明する.AIは消費者の個人データを利用することから,プライバシーコストに違いのある消費者がホテリング線分上に分布し,線分の両端に,AI製品を販売する企業と通常製品を販売する企業が立地しているという複占市場を考える.プライバシーコストの低い消費者はAI製品を利用し,プライバシーコストの高い消費者は通常製品を使うだろう.この設定では,よく知られた最大差別化原理に従って,市場シェアは半分ずつになる.これを基本として,AIの特徴や損害を回避する費用を取り入れることでモデル拡張を試みる.例えば,消費者はAI製品の利用において操作の必要がないため費用は発生しないが,通常製品を利用する場合は操作が必要であるため,損害回避のために費用が生じるという設定にする.このため,プライバシーコストの高い消費者であっても,損害責任を避けることができるAI製品を選ぶ可能性がある.なお,本研究は,AIが関わるビジネスを対象としているが,そこでの手法を応用できる範囲で他のビジネスも対象とする
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