研究課題/領域番号 |
21K13316
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分07050:公共経済および労働経済関連
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
小原 拓也 中央大学, 商学部, 准教授 (40848173)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
|
キーワード | 最適課税理論 / 育児に関する意思決定の非効率性 / 非線型労働所得課税 / 物品課税/補助 / 最適政策 / 家計内の意思決定の非効率性 / 育児・介護 / 出生数 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、最適課税理論の枠組みを用いて、家計内での育児・介護における意思決定から生じる非効率性を是正するための望ましい育児・介護政策を理論的かつ定量的に考察する。近年の実証研究の結果から、家計内での育児・介護における意思決定が出生数の減少や介護の供給過多といった非効率性をもたらすことが明らかにされた。政府の政策介入によって家計内での問題を矯正し、少子高齢化の進展において持続可能な社会を実現するための最適な育児・介護政策を規範的に明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本年度は昨年度に引き続き、最適課税理論の枠組みを用いて夫婦の非協力行動から生じる育児の非効率性を内部化するための所得税体系を分析した。実証研究から所得税は育児を誘発することが明らかにされてきたが、夫婦の非協力問題を矯正するための所得税体系を明らかにした理論研究は少なく、本研究のように公平性の問題も同時に考慮しながら分析している研究は知る限りない。 定性的な分析に関しては、昨年度までの理論分析の精緻化と拡張分析(非協力的と協力的な家計が混在する経済における最適課税分析)を行い、ほぼ完成に至っている。一方、昨年度の大きな課題として残されていた定量分析に関しては、順調に分析が進んでおり、ベンチマークとなる結果とその拡張分析の結果を得ることに成功している。具体的には、ベンチマークとして夫婦が協力的な場合と非協力的な場合における最適税率の導出を行い、拡張分析として、非協力的な夫婦の所得格差、労働供給の税に対する弾力性の違い、育児の能力の違い及び消費財の選好の違いを考慮した場合の最適税率に関する数値計算も行った。 得られた結果として顕著なものは、協力的な場合よりも非協力的な場合の方が全ての所得階層で税率が高くなるというものである。理由は、税率の引き上げにより外での労働から育児へシフトさせることで、夫婦の非協力による過小供給の問題を内部化するためである。また夫婦に所得格差がある場合には、協力的な場合よりも非協力的な場合の方が税率の差別化を小さくすることが望ましくなる。理由は、税率の差別化を図ると、一方の配偶者のただ乗り(フリーライド)を促し、育児の非効率性が拡大するからである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、家計内での育児の非効率性だけではなく、介護に関する非効率性も考慮した上での理論モデルを構築・分析することで、急速な少子高齢化に直面する日本において持続可能な社会を実現するための政策を規範的に明らかにすることである。しかし現時点では、育児に関する非効率性のみを考慮した分析に留まっており、介護に関する非効率性の問題を理論モデルに反映できていないことから分析がやや遅れている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
まず定量分析として、家計内公共財に寄与する市場調達財がある場合の理論分析を踏まえて数値計算を行い、これまでの市場調達財がない場合と比較して結果がどのように変化するのか考察する。加えて、残された課題である家計の介護に関する非効率性を考慮したモデルを構築し、望ましい政策を分析する。最後に、育児だけでなく介護も含めた包括的なモデルにおける定量分析を行い、現実社会に有効な政策提言を考案する。
|